今年のゴールデングローブ賞を受賞した映画『ノマドランド』の監督クロエ・ジャオ(趙婷)氏は、中国を批判した過去の発言が問題視され、バッシングを受けている。中国問題専門家はこの出来事について「社会の全面的な後退」と評した。
同賞ドラマ部門で作品賞と監督賞を受賞した趙監督は中国出身で、アジア人女性として初めて同賞を受賞した。中国メディアは「中国の誇り」として同氏の快挙を褒め称えていた。受賞を報じた記事は微博で3400万回閲覧され、国民から祝福の声が上がった。来月23日の劇場公開も決まった。
しかし5日、同映画のポスターは映画情報サイトの豆瓣電影(Douban)から削除された。タイトル『ノマドランド』の中国語訳『無依之地』が、ネット規制の対象になり、検索不能となった。
賞賛の嵐から一転して、映画の公開が危ぶまれる事態になった理由について、ネットユーザーらは監督の過去の発言が原因ではないかと推測している。
2013年、米映画雑誌のインタビューで「私が育った中国は嘘ばかり。小さい頃教えられたことは、のちに嘘だとわかった。だから私は反逆的になった」と語った。2020年、豪メディアに対して「今の私の祖国はアメリカだ」と発言した。
1982年生まれの趙監督は中学時代からイギリスへと渡り、その後、米国の大学で政治学と映画を専門的に学んだ。父親は中国国有企業製鉄大手の元総裁であり、趙監督の母と離婚後、中国で誰もが知っている有名女優と再婚した。
一部のネットユーザーは共産党体制から恩恵を受けた家庭で育ったのに、海外に出て中国批判に走るのは「けしからん」と批判した。
また、趙氏を「売国奴」呼ばわりして、映画のボイコットを呼びかける声もある。
在米中国人評論家の胡平氏は、趙監督への批判が社会の全面的な後退を反映したと指摘。「10年近く前の発言を掘り起こして批判するのは、現政権の脆弱さを象徴する」
あるネットユーザーはこの話題を封鎖した微博でこう書き込んだ。「趙婷の発言を全く知らないが、ここで起きた全ては彼女の発言が正しいと証明している」
(翻訳編集・李沐恩)
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