中国国内の学者はこのほど、国内総生産(GDP)成長率の目標設定が多くの弊害を生んだとして、目標設定をやめるべきだと主張した。昨年、中国の楼継偉元財政相も同目標の設定の撤廃を提案した。
中国シンクタンク、中国財富管理50人論壇(CWM50)が25日、SNS大手の微信(ウィーチャット)に投稿した文章によると、中国人民銀行(中央銀行)金融政策委員会の馬駿・委員はこのほど、同シンクタンクが開催したフォーラムで「GDP成長率目標の設定を永久に撤廃すべきだ」と述べたという。馬氏は、清華大学金融および発展研究センターの主任も務めている。
馬氏は、地方政府や投資機関が「GDPの数値を予測の指標として」使ってもよいが、「地方政府の役人が昇進する際の業績評価基準にしてはならない」と述べた。
また、同氏は「地方政府が中央政府のGDP成長率目標に基づいて、地方のGDP成長率目標をより高く定める傾向がある。そのため、地方政府が経済を刺激するために融資を拡大する。これによって、隠れ債務がもたらす金融リスクがさらに増大する恐れがある。それに、地方政府の役人が出世のために、高い成長率に達したと虚偽報告を行うことも必ず起きる」と指摘した。
一方、昨年の両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)では、楼継偉元財政相は、GDP目標を設けないことを提言した。楼氏は「習慣的な指標設定はマクロ経済政策をねじ曲げた」と発言した。
昨年の両会で、中国当局は中共ウイルス(新型コロナウイルス)の感染拡大に伴う景気悪化で、同年度の経済成長率目標を設定しなかった。
当局は今年の両会を3月に開催すると発表した。中共ウイルスが依然として猛威を振るっている中で、当局が今年のGDP成長率目標を設けるのか、注目が集まっている。
豪シドニー工科大学の馮崇義教授は、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、「中国当局のGDP成長率設定は、市場経済の摂理に反している。地方の各レベルの政府は、本当の経済指標を隠している」と述べた。
中国経済に詳しい金山氏はRFAに対して、「中国国内の学者が、GDP成長率の目標設定の撤廃を提案したのは、市場経済に順応するためではなく、GDP目標設定に関する世論批判に合わせたものだ」との見方を示した。
(翻訳編集・張哲)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。