ツイッターに9月、「中国は敵ではない」と名乗るアカウントが開設された。フォロワー数は12月4日現在、450人ほどで、大部分はサンフランシスコを中心とする女性左翼団体CODE PINK(コードピンク)のメンバーや支持者、社会主義者、マルクス・レーニン主義者など。中国共産党(中共)との直接的な関係は明らかではないが、党と言論を一致させ、そのプロパガンダを拡散している。
コードピンクは、2002年にイラク戦争の抵抗運動として設立した反戦運動組織。その説明は「米国の軍国主義を終わらせ、平和と人権のイニシアチブを支援する」としている。フェミニズム、反戦、反レイシズムを掲げ、目を引くショッキングピンクをテーマカラーにしている。
この運動には、サンフランシスコ大学のステファン・ロディ(Sthephen Roddy)東アジア文学教授や、英国のマルクス主義の学者ジョン・ロス(John Ross)氏など知識人も参加している。
ツイッターでは、中共のプロパガンダや党に有利な情報を拡散したり、反米思想を発信したりしている。最近は、11月24日にニューヨーク・タイムズ紙が掲載した元中国外交部副部長(次官級)・傅瑩氏の同紙への寄稿記事「米中は協力と競争が共存する関係を築くことができる」を転載した。また、17日には、元国務長官ヘンリー・キッシンジャー氏が、次政権に中国との関係改善に努めるよう期待するとした新興メディアの記事をシェアした。
コードピンクの創始者ジョディ・エバンス(Jodie Evans)氏は、ジョー・バイデン(Joe Biden)元副大統領とカマラ・ハリス(Kamala Harris)議員に向けて「中国への憎悪に終止符を打つために働きかけよう」と呼びかけている。
コードピンクのウェブサイトには、「中国についてのQ&A」がある。これには「米PRコンサルティング会社エデルマンの調査報告によれば、中国人の95%が中国共産党に満足している」「中国政府は食糧安全保障のために穀物貯蔵システムを確立し、労働者の収入を増加させた」など中国政府を擁護する内容のみが掲載されている。人権問題や情報検閲、技術盗用などの話には触れていない。
「ウイグル問題とは何か」という質問に対して、コードピンクは複数の情報源を紹介する。海外の親中共サイト「橋組(Qiao Collective)」の説明から、「中国が新疆で行った対テロ政策は政治化され、米国主導の対中戦争のもう一つの前線である」とし、100万人とされる大規模な住民の収容を肯定している。
他には、学者で左派の政治活動家であるジョン・ロス氏や、米メディア、グレーゾーン(Gray zone)の創始者マックス・ブルメンタール(Max Bluementhal)氏の見解として、「ウイグルの人権状況は、中国を攻撃するために米国が捏造した大嘘だ」と強調した。ブルメンタール氏は、ロシア官製メディアのロシア・トゥデイ(RT)や中国グローバル・テレビ・ネットワーク(CGTN)のインタビューに頻繁に登場する人物だ。
米国の学者で元国防総省情報アナリストのダン・ギャレット(Dan Garrett)氏は、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、親中共の作家やジャーナリストが書いた中共擁護の記事は、中国官製メディアのみならず、欧米の主流メディアも大量掲載していると指摘した。「グレーゾーンのような独立を謳うメディアはより頻繁に記事を転載している」
なぜ全ての戦争に反対しないのか
コードピンクの反戦の主張について、「なぜ全ての戦争に反対しないのか」とツイッターユーザーが質問を投げかけた。「反戦の姿勢を貫くならば、中国の台湾に対する軍事的脅威も批判すべきだ」
コードピンクは台湾問題の回答を避け、「米国の中国への攻撃がエスカレートしており、米国では中国人コミュニティに対する深刻な人種差別が発生している」と反論した。
コードピンクは、欧米の19の左翼団体とともに反米同盟「新冷戦にノー(No Cold War)」構想を立ち上げた。2020年7月、参加団体はオンラインセミナーを開催し、48カ国からの専門家や政治高官による共同声明として「中国に対するいかなる新冷戦も人類の利益に反する」「米国の暴走と世界の分裂を止める」と発表した。
このセミナーは、中国官製メディアが大々的に取り上げた。セミナーには中共御用学者も多数参加し、中国外交部の楽玉成次官も称賛のコメントを送っている。中国外交部の華春瑩報道官もリツイートして宣伝を手伝った。
統一戦線作戦?
米シンクタンク・ヘリテージ財団のマイク・ゴンザレス(Mike Gonzalez)上級研究員は、これが中共の対外工作である統一戦線工作部による作戦であるかどうかは、調査が必要だとしている。「意図的なのか、無知によるものかにかかわらず、コードピンクは中共のプロパガンダを『オウム返し』しているようだ」と指摘する。「新疆の強制収容所への否定は中共の悪行を美化していると言わざるを得ない」
米国防省の元情報分析官ダン・ギャレット氏は、コードピンクが中共統一戦線工作部(統戦部)から資金提供を受けてなくても、同部の主張を全面的に支持しているように見えると指摘した。コードピンクの活動には「中共の御用学者や、マルティン・ジャックやロス・チャイルドのような、中国の政府系メディアに頻繁に登場する欧米の学者が関与している」。また、コードピンクと同盟を結ぶ欧米の左翼組織は、人民日報やチャイナ・デイリーが掲載している見解とほぼ同じだ。「統戦部の海外展開がもたらした影響の好例だ」
ギャレット氏はまた、中共のプロパガンダの中心戦略の一つは「中国政府と中国人民を混同し、意図的に区別をつけないこと」だと指摘した。コードピンクも同様に、中共に対する米国の批判は中国人への人種差別だと主張する。
ギャレット氏は、欧米の左翼グループと中共が近づくのは「反欧米」の一致だという。共通のマルクス・レーニン主義者であり、暴力的な行動を起こす可能性のある存在だ。そして、これらの左翼は中共のように、世界のあり方に不満を抱いており「諸悪の根源は西側にある」と断じている。
「中国が西側社会を分割統治するために最も有効な方法の一つは、社会に不満を持っているグループを利用することである」とギャレット氏は分析する。
中共に追随する米左翼
前出のマイク・ゴンザレス上級研究員は、 西側の多くの社会主義・共産主義の信仰者は、中国をマルクス主義陣営の盟主だと見ていると指摘した。これらの人々は、たとえ弁明の余地のない悪意ある行為であっても、中国を擁護する。極左組織、解放ロード(Liberation Road)は中共の政治運動「文化大革命」を称賛し、模倣すべきとしている。
「中国は米国と大国間競争をしている。だから、米国社会に何らかの不安定要因を作りたいと考えている。あまり目立たないように、中国は米国社会と民主主義を混乱させるためには、何でもしたいと思っている」「社会秩序の大変革を待ち望んでいた米国の社会主義者らには、中国に追随するのは自然なことだろう」とゴンザレス氏は付け加えた。
ギャレット氏は、中共は数十年の間、自らを「世界の平和を愛する党」との宣伝工作を続けていると指摘する。近年、コードピンクや左翼組織は、米国を「世界平和の脅威」と主張する。これらの組織に主義主張を唱える自由はあるものの、中共の御用学者、メディアが彼らの活動に参加していれば、「外国代理人」と見なし、外国勢力の干渉問題として取り扱うべきだと同氏は主張した。
(翻訳編集・佐渡道世)
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