米国際開発庁のジョン・バルサ副長官代理は11月19日、太平洋の島嶼諸国における中国の影響力の増加に対応するため、同地域で担当人員を増やし、資金援助を強化することを明らかにした。
シンクタンクの東西センター(East-West Center)で開かれたオンライン・イベントに出席したバルサ氏は、米国際開発庁は、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の流行による太平洋諸島諸国への経済的・社会的影響を緩和させるため、2つの支援プログラムを実施しているという。
この2つのプログラムは、米国が新たに設立した太平洋米国基金(Pacific American Fund)の最初の援助プログラムだ。
米国は2020年初め、インド太平洋援助計画として2億ドルの資金を増加した。その中の7800万ドルは新しいプロジェクトに、1億3000万ドルは感染症対策に当てられる。
バルサ氏によると、米国際開発庁は他にもこの数週間で、パラオの海底光ケーブル建設計画やパプアニューギニアの電力協力、ソロモン諸島の競争力、天然資源、環境管理の強化など、さまざまな援助を発表している。今後数週間、数カ月のうちに、さらに多くのプロジェクトが開始される予定だという。
「私たちは、自由で開かれたインド太平洋(Free and Open Indo-Pacific)という共通のビジョンのもと、資源を投資することにコミットしている。さらに倍の投資を行い、地域に大きな影響を与える3つの新しい地域プロジェクトを開始する準備を進めている」とバルサ氏は述べた。
米国際開発庁アジア局補佐官グロリア・スティール(Gloria Steele)氏は、「私たちは、他国のように負債に苦しませるのではなく、インド太平洋諸国が自身で進路を選択することを望む」と述べた。
こうした取り組みは、太平洋の島国で高まる北京の影響力の抑制を狙ったものとみられている。昨年、ソロモン諸島とキリバスは台湾と断交し、中国と国交を結んだ。今年上半期に世界で中共ウイルスの流行が始まった後、北京は検査キットや防護設備の提供を約束するなど、太平洋地域に対する「マスク外交」を展開した。
米国務省東アジア太平洋担当次官補デビッド・スティルウェル(David R.Stilwell)氏は19日のフォーラムで、「略奪的な中国はインド太平洋の地域の巨人であり、地域社会と経済の安定を脅かしている」と述べ、米国が主権を支え、自由を保障し、経済の安定を維持するというメッセージを伝えたいと述べた。
太平洋の島国パプアニューギニアは中国共産党の過剰融資「債務の罠」にはまっており、対中年間債務返済額は2023年までに、25%増の6700万ドルに上るとの報告もある。
米国は経済援助以外にも太平洋諸国との関係強化を続けている。2020年8月、エスパー米国防長官(当時)がパラオを訪問した。太平洋諸国が持つ地政学的価値を浮き彫りにした。米国防長官がこれまでパラオを訪問したことはない。
北京からの圧力にもかかわらず、パラオは台湾や米国との強い絆を保っている。パラオのレメンゲサウ大統領(Tommy Remengesau)はエスパー長官訪問中に、パラオに軍事基地を建設するよう米国に要請した。
パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア諸国は米国と自由連合協定(Compact of Free Association)に調印している。米国は3カ国に防衛や経済発展の援助を提供するほか、これらの国の国防を担う。2019年8月、マイク・ポンペオ米国務長官は、同3カ国の首脳と会談し、中国との関係を牽制した。
(翻訳編集・佐渡道世)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。