豪メディアNEWS.com.auのジャーナリスト、ジェイミー・サイデル(Jamie Seidel)氏は8月10日、「バッシングを受ける習近平氏の戦狼術」と題する記事を執筆した。記事は「米国を挑発し、『戦狼術』の乱用で世界を支配するチャンスを台無しにした習氏は、軍の主要な将軍らから非難されている」と書かれている。
戦狼術とは、好戦的で過激的な外交手法を意味する。中国への批判に強い言葉で反論したり、服従しない国に経済制裁を下したりする強硬外交を展開する。
さらに「全ての独裁者と同様、習氏も多くの内外問題に直面しているが、軍の将軍らが反対意見を表明し始めたら最悪の局面になる」と述べた。同記事中の「反習将軍」とは、『超限戦』の作者である喬良氏と戴旭氏の2人。
戦狼術が全世界からの反撃に遭う
サイデル氏は記事の中で、「中国共産党の『過ちを他人のせいにする』という常套手段は、もはや通用しない」と述べている。
同氏は「中国共産党の強烈な脅迫と威嚇に直面し、毅然とした態度をとれるようになった国として、ファイブアイズ参加国を含むオーストラリア、イギリス、カナダ、インド、日本、ベトナムなどを挙げた。この変化は習氏にとっては、まさに「メンツ丸つぶれ」のはずだと述べた。
中国は経済制裁でオーストラリアを脅かしているにもかかわらず、豪政府は屈することなく、東シナ海と南シナ海の国際法の堅持を主張している。
マレーシアは中国の度重なる経済侵略や南シナ海での商業活動への干渉を受け、ついに昨年、正式に抗議文を発表した。そしてベトナム、ブルネイ、フィリピンやインドネシアなどの近隣諸国もこれに追随した。
ソマリアのような小さな国でさえも弱みを見せまいとしている。 報道によると、駐ソマリア中国大使の秦健氏は最近、同国大統領に対して「恫喝外交」を展開しようとしたが、「追い出された」という。また同国政府は中国共産党の脅しに屈せず台湾との国交を開始した。
北京のエリート層からの反習氏の声
習氏は、国際社会で壁にぶつかっているだけでなく、国内でも社会的影響力のある人物から反対の声が上がっているという。
サイデル氏は、豪ローウィー国際政策研究所(Lowy Institute for International Policy)の中国問題学者リチャード・マクレガー氏の観点を引用し、「北京のエリートの間では、習氏への不満がくすぶっている」と述べた。
同氏はまた、「北京当局が清華大学教授の許章潤氏を逮捕したのは、エリート層への警告と見せしめだ」と指摘した。 同教授の罪名は「中国人の法的平等の権利を提唱したため」だという。
許教授は、共産党に管理支配されている司法制度の中で、公然と習氏に異議を申し立てた唯一の人物だ。 57歳の同教授は先月、十数人の警察官に自宅アパートから連れ去られた際、「覚悟と準備」は既にできていたという。同氏は、いつ逮捕されてもいいように長い間、着替えなどを玄関に置いていた。
「中国共産党は許教授のようなエリート層の声を抑えることはできるが、軍の将軍らの不満には向き合わなければならない」とサイデル氏は述べた。
習氏の戦狼術、軍中タカ派の反撃を喰らう
サイデル氏は記事の中で「習氏に反発している軍部関係者は、『超限戦』の作者である元空軍大佐の喬良氏と現役空軍大佐の戴旭氏の2人だ」と明かした。
喬良氏は中国軍の著名なタカ派将軍であり、1999年に著書『超限戦』を出版した中国の現代軍事理論の創始者の一人でもある。その彼が今、「台湾は武力で解決すべきだ」という習近平氏の両岸政策にあえて異論を唱えた。
同氏は今年のインタビューで、「中国の最終的な目標は台湾統一ではなく、重要なのは14億人が幸福な生活を送ることだ」「台湾統一は現実的か?もちろん不可能だ」と語った。
さらに「台湾問題の背後には米中関係があり、これは米中の競い合いだ」との見解を示した。
喬氏と同じ考えを持つ空軍大佐の戴旭氏の主張はもっとストレートだ。同氏は「米国に関する4つの誤認と10の新認識」と題する論文を発表し、「中国は米中冷戦の代償を払うことになる」と主張した。
さらに「米国が中国に300億ドル分の関税をかければ、これは国際的に600億ドル、900億ドル分の効果がある。これがまさに『米国の本当の強さだ』。中国は米国を相手にする時、怒りではなく、理性を持って臨まなければならない。知恵と勇気で戦わなければならない」と同氏は主張した。
前述のリチャード・マクレガー氏は、「これらの現象は北京に『影の政府』の存在を示唆している」と考えている。
同氏によると、「中国のリベラルな学者らは、習氏の傲慢な外交と軍事政策が米国を怒らせたと非難している。そして、これらのリベラル派は1980年代に鄧小平氏が強調した「韜光養晦」( 才能を隠して、内に力を蓄える)という中国の外交・安保の方針を好み、そこから身を守る方法を学んだ。だから、彼らが習氏のやり方を批判する時は通常、習氏の名前を直接出さない」という。
(大紀元日本ウェブ編集部)