米国務省のオルタガス報道官は7月22日、米政府がテキサス州ヒューストンの中国総領事館に対して、72時間以内に閉鎖するよう通告したと発表した。報道官は声明で「米国の知的財産と米国民の個人情報を守るため」「中国による主権の侵害や米国民への脅迫を容認しない」と強調した。
中国総領事館の閉鎖は、1979年に米国が中国共産党政権と国交を樹立して以来、初めてのことだ。
総領事が偽の身分証明書を使用
デイビッド・スティルウェル(David Stilwell)国務次官補はニューヨーク・タイムズ紙に対して、在ヒューストン中国総領事館の蔡偉総領事と中国人外交官2人を、ヒューストン空港で現行犯逮捕したと語った。総領事らは、偽の身分証明書を使って、中国人訪問客を中国国際航空(エアチャイナ)の中国行きチャーター機に乗せようとしたという。
スティルウェル国務次官補は、在ヒューストン中国総領事館は、中国軍のスパイ活動の拠点だと指摘した。中国軍が中国人留学生を米大学に送りこみ、情報を窃盗している。さらに、同氏は、過去6カ月、中国当局による米科学分野の研究での窃盗が加速化していると述べ、中共ウイルス(新型コロナウイルス)のワクチン開発と関連していると考えている。
中国総領事館はこれまでにも、エアチャイナを利用して、米国にいる諜報員の中国逃亡を手伝ったことがある。
2019年、エアチャイナの元職員・林英被告は、ニューヨーク東部地区連邦地方裁判所の裁判で、在職中に中国当局の代理人を務めた罪を認めた。起訴状によると、2015年10月28日、林被告はFBIがスパイ容疑で調査中の秦飛(Qin Fei)容疑者を中国に逃亡させたとの疑い。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は22日、情報筋の話として、米政府は近年、米国内にある5カ所の中国大使館・領事館の諜報活動について、懸念を深めていると報じた。米連邦捜査局(FBI)は、ヒューストンの中国総領事館に所属する中国人諜報員への監視を特別に強化した。
米内政への干渉
マルコ・ルビオ米上院議員は22日、米フォックスニュースに対して、在ヒューストン中国総領事館による活発なスパイ活動を批判し、「(中国当局の)産業スパイ活動と国防関連スパイ活動の中心ノードだ」と述べた。
ルビオ議員は、同総領事館は、「議会への影響力を拡大するためにスパイ行為を繰り返してきた」とし、「経済界のドンを動かし、国会議員や、各州レベルの高官や政治家に影響力を行使している」という。
ルビオ議員は、上院の情報特別委員会の委員長を務めているため、政府の機密情報を確認することができる。
ポンペオ米国務長官は今年2月、全米知事協会の会議に出席し、各州の知事に中国当局について警鐘を鳴らした。同長官は、中国の在ニューヨーク中国総領事館などの5つの総領事館とワシントンDCにある中国大使館は「『領事関係に関するウィーン条約』を順守しておらず、各州の政界で活発に活動している」と非難した。
ポンペオ長官は会議の中で、在ニューヨーク中国総領事館の総領事がある州議会に送った書簡を読み上げた。書簡では、中国の総領事が米国の州議員らに対して、「当選したばかりの台湾の総統に祝辞を贈らないように。総統の就任式に、州の高官などを派遣してはいけない。台湾(政府)と接触してはいけない。台湾の高官を招へいしないで」などの要求が並んでいる。
同長官によると、ミシシッピ州のフィル・ブライアント州知事(当時)が2019年8月、在ヒューストン中国総領事館から書簡を受け取った。総領事館は、ブライアント州知事が台湾を訪問すれば、中国は同州での投資計画を全部取り消すとどう喝した。
ポンペオ長官は、中国当局が在米中国人留学生に対して、周りの中国人留学生を監視するよう強要し、定期的に報告させていると語った。
米国人エリートを引き抜く
ポンペオ国務長官は州知事会議の中、テキサス州A&M大学の調査報告書に触れた。同大学の調査では、100人以上の米国人学者が中国当局の海外人材誘致プログラム、「千人計画」に参加した。しかし、実際に同計画に参加したと申告した学者は5人にとどまっている。
米誌「ワシントン・エグザミナー(Washington Examiner)」の今年6月25日の報道では、FBIが公表した起訴状の中で、中国大使と在ニューヨーク中国総領事館の外交官は密かに米国人科学者の「千人計画」への誘致に協力しているという。報道では、中国大使の名前を明らかにしなかった。2013年以降、駐米中国大使は崔天凱氏から変わっていない。
主権侵害
在米中国時事評論家の章天亮氏は22日、自身のYouTube番組で、中国総領事館の閉鎖を命じた最大の理由は、「米国の主権を侵害したことにある」との見方を示した。
章氏は、米政府は以前から中国大使館や総領事館による諜報活動を把握しているとしたうえで、「今となって、スパイ活動を理由に閉鎖させるのは理屈に合わない」と分析した。同氏は、2017年と18年に米政府がロシアの在サンフランシスコ総領事館、在シアトル総領事館を閉鎖したことと、1999年、米軍が当時の駐ユーゴスラビア中国大使館を爆破したことを例に挙げ、「米に敵対行為があるためだ」と分析した。
米国人学者のゴードン・チャン氏は同日、フォックスニュースの番組に出演し、「未確認情報だが、同総領事館が米国の(Antifaなどの)抗議団体と連携し、資金援助や後方支援を行っていたという情報がある」と話した。
チャン氏は「しかし、中国の外務省と共産党の海外関連組織が悪意のある情報操作を行い、人種問題を利用して米国内の対立を意図的に高めたことは確認されている」と述べた。
同氏によれば、米税関はすでに中国から送られた「抗議者にとって非常に便利な道具」を押収したという。
デイビッド・スティルウェル国務次官補も22日、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューに応じた際、在ヒューストン中国総領事館は長い間、米政府に対する「転覆行為(subversive behavior)」があると非難した。
(翻訳編集・張哲)
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