中国当局は7月17日、2017年に香港から本土に連行した富豪、肖建華氏が率いる明天ホールディングス(以下は明天集団)傘下の金融企業9社を接収すると発表した。18日、明天集団は声明を発表し、中国当局による強制接収を非難した。専門家は、民間企業である明天集団が公に当局指導部の決定に反発したことは、党内の激しい権力闘争を反映したとの見方を示した。
中国の金融監督当局、中国銀行保険監督管理委員会は17日、天安財産保険、華夏人寿保険、天安人寿保険、易安財産保険、新時代信託、新華信託の6社が関連法令に違反したとして、17日から6社の経営権を接収すると発表した。また、同日、中国の証券当局も、明天集団傘下の新時代証券、国盛証券、国盛先物取引の経営を接収すると公表した。接収期間は1年。
これを受けて、明天集団はSNS微信で声明を発表し、当局が「全力で接収を推し進めている」と非難し、接収の目的に疑問を呈した。声明は、肖氏が当局に拘束されて以降、明天集団は当局の捜査に積極的に協力し、国内外の資産を売却して「天安財産保険の債務不履行を回避できた」が、監督管理当局が「調査チーム」を傘下各社に派遣し厳しい管理を行ったことで「自主経営権はすでに奪われたと言える。正常の業務展開も許可されなくなった」などと糾弾した。
同声明は数時間後に削除された。中国では、民間企業が当局の決定を批判したことは非常に異例のことだ。
中国人学者の何純氏は7月21日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、「明天集団は一般企業ができないことをした。明らかに、明天集団の背後にある政治勢力が後押ししている。この勢力は、省レベルより高い地位にあり、指導部に逆らう力を持っているだろう」と述べた。
これまでの報道や情報では、明天集団の創業者である肖建華氏は、1989年、当局が民主化を求める学生らを武力鎮圧した「天安門事件」の当時、北京大学学生会の会長を務めていたが、当局の鎮圧を支持した。この後、当局高級幹部の子弟から構成される「太子党」などに近づき、急速に出世を果たした。特に、共産党内江沢民派の中心人物、曽慶紅一族と最も近い関係にある。肖氏は、江派のために蓄財し、マネーロンダリングを行い、江沢民や曽慶紅らの「金庫番」だった。また、2015年の株価大暴落は、江派や肖氏らが株式市場を操り、習近平国家主席の失脚を狙った「金融クーデター」だと言われた。習政権は、腐敗摘発運動の一環で2017年、肖氏を香港から本土に連行した。
1999年に肖氏によって設立された明天集団は、金融業、不動産、エネルギー、インターネット、通信などさまざまな分野に進出していた。中国メディア「財新網」の報道によれば、今回、中国当局に実質上国有化された傘下企業9社の総資産は、2019年末時点で1兆2000億元を上回ると推定される。また、金融情報サイト「新財富」の18年の報道では、17年6月までに明天集団が投資した国内金融企業は44社あり、資産総規模は3兆元に達した。
時事評論家の文昭氏は7月21日、YouTubeで公開している自身の時事評論番組で、習近平陣営が明天集団の傘下企業を接収したことは、曽慶紅らの「金庫」を没収したことに等しいとの見解を示した。「党の長老や要人が集まる北戴河会議が開催される前に、習近平当局が江派に対して、以前のように問題を起こすなと警告を発したと見て取れる」
香港人実業家の袁弓夷氏は、大紀元の取材に対して、習近平当局は江派が中国の金融セクターと広東省・香港の政治経済を支配している現状を打破したい思惑があるとの認識を示した。これは、習当局が香港で国家安全維持法を強制的に導入し、新たなに出先機関を設置した理由の1つでもあると袁氏は指摘した。
中国当局が昨年接収した内モンゴル自治区の地方銀行、包商銀行も明天集団の系列企業だった。
(翻訳編集・張哲)
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