米連邦捜査局(FBI)と司法省は、米国開発のトウモロコシの種子から航空機部品、商業機密、米大学の研究所のハイテクまで、すべてが中国のスパイの標的になっており、広範囲な調査と摘発を行っている。このほど戦略国際問題研究所(CSIS)で開かれた、米当局における対中スパイ会議「中国イニシアチブ」関連フォーラムでは、複数の中国スパイによる窃盗事例が明かされた。
米アイオワ州トウモロコシ畑に不審なアジア人
「畑の農地をうろうろとさまよう、スーツ姿のアジア人の男がいる」。2011年9月、まもなく収穫を迎えるアイオワ州中部トウモロコシ畑で、畑の管理者が不審な人物を畑で見つけて、警察に通報した。
3人の副保安官が駆けつけ、調査した。男は中国人の莫海龍(Mo Hailong)、莫は、友人と共に農業研究を行っていると主張した。その後、警察に監視されていた莫は、別のトウモロコシ畑で、数人の中国人と共に土を掘っている様子が確認された。その後のFBIの調査で、莫らがトウモロコシの種子サンプルの窃盗を目論んでいたことが明らかになった。
司法省のリリースには、その中国産業スパイの詳細が記されている。
米国永住権を持つ莫は、北京大北農科技集団の国際ビジネス部マネジャーだった。共謀していた6人の被告もまた、同社あるいは関連企業の社員だった。
土を掘っていたトウモロコシ畑は、米国のアグリ企業大手モンサント社、デュポン社、LGシーズに所属する農場だという。2016年10月、莫は農業スパイの罪で3年の懲役刑を言い渡された。
中国産業スパイについて書籍を発表した作家マーラ・ビステンダール(Mara Hvistendahl)氏は著書『科学者とスパイ』のなかで、莫のケースは、米中対立における中国側の駒のひとつに過ぎないと書いている。
米国の対中スパイ大規模調査
FBIと米国司法省は、中国のさまざまな経済スパイ活動が米国の国家安全保障に長期的な脅威をもたらすとみている。莫の例は、対米スパイ活動における氷山の一角に過ぎない。
FBIのクリストファー・レイ局長は、CSISが開催した米当局の対中スパイ対策「中国イニシアチブ」に関する会議に出席し、中国スパイは、「ありとあらゆる手法を使って、米国の技術と機密を盗もうとしている」と述べた。局長によると、FBIの56の地方事務所は、中国による技術窃盗容疑のケースを約1000件調査していることを明らかにした。
「中国イニシアチブ」は、2018年11月1日に開始した、米国司法省による計画だ。米国の国家安全保障を脅かす中国の行動に、対抗する計画だ。計画によれば、米国司法省は、企業秘密を盗み、経済スパイ活動に関与し、米国海外腐敗行為防止法(FCPA)およびその他の米国法に違反していると疑われる中国企業を積極的に調査し「起訴までの努力を惜しまない」としている。
CSISの会議に出席した米政府検察官ジェイ・タウン(Jay Town)氏は、中国の窃盗は米国中に広がっていると述べた。「米国の主要都市、シリコンバレーやニューヨークなどのテクノロジーの中心地のみならず、アラバマ州からアイオワ州まで、全国各地で行われている」と述べた。
(翻訳編集・佐渡道世)
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