なぜアメリカの若者たちは不幸なのか(下)

2020/02/11
更新: 2020/02/11

私は前回、アメリカ人の若者の幸福度が著しく低下していることを挙げた(他の場所でもそうだが、特にアメリカで)。自殺率、自傷行為、ウツ、銃乱射、孤独感は、過去のデータと比べて危機的に上昇している。

過去の大恐慌や世界大戦時よりも、健康、寿命、教育、物質的な豊かさは格段に上がっている。それにも関わらず、アメリカ人は不幸を感じている。

最大の理由は、価値観人生の意味の喪失である。

互助組織の消失と共に、価値観も失われた。フランス人の政治思想家・アレクシ・ド・トクビルは1831年、アメリカ人の強みについて書いている。それは、無数の非政府組織の存在である。専門家、社会、市民、政治、芸術、慈善団体があり、もちろん宗教的な組織もあった。この組織を通じて、アメリカ人たちは絆を深めていた。

しかし、政府が大きくなると、これらの非政府コミュニティーは衰退した。今日のアメリカ人たちはどうだろうか?2012年の全国大会で、民主党の司会者はスローガンを叫んだ。「政府こそが、われわれの心のよりどころだ!」

そして、われわれは最大の危機に直面している。人生の意味の喪失である。衣食住の他に、人間に最も必要なのは人生の意味である。

マルクスは、人間は主に経済的な理由によって動かされると主張した。フロイトにとって、人間の動機は性的欲求、ダーウィンにとって、それは生物学的な理由である。

しかし、私はどれも正しくないと思う。

経済的な理由はどうか。貧しくても、幸福な人はいる。しかし、裕福であっても人生の意味を失っていれば、幸福にはなれない。

性的欲求はどうだろうか。性交渉のない生活(生涯独身の聖職者、夫を亡くした女性、離婚した人など)でも、人生の意味を見いだせる人は幸福である。しかし、生きがいのない人生を送る人たちは、たとえ活発な性交渉があったとしても不幸である。

生物学的にはどうか。進化論の中に、人生の意味に対する答えはない。人間以外、いかなる生物も存在の意義や価値観を見つける必要がないのだ。

そして、その人生の意味を、多くのアメリカ人たちは見つけられない。その意味を与えてくれるはずの信仰や宗教も、戦後は歴史のゴミ箱へと捨てられてしまった。

その結果、どうなったか。

1980年以降、三分の一以上のアメリカ人が信仰を持たない。これは、米国史上初めてのことである。それまでは、多くのアメリカ人は宗教を信じていた。

多分、アメリカ人(またその他の国も含めて)の中で広がっている悲観論や孤独感は、人生の意味を与えてくれるはずの宗教がなくなったからだと思う。2016年の米医療ジャーナル「JAMA(米国医師会雑誌)」は、週一回の宗教的な礼拝に参加するアメリカ人女性は、自殺率が5倍減ると報告している。常識的にみれば、男性の場合も同じであろう。

要するに、最大の要因は左翼の仕業である。彼らがユダヤ教やキリスト教は馬鹿げていると主張し、アメリカは邪悪な国家で、その歴史は悲惨であり、未来は暗黒だと宣伝するからだ。

不幸感の最大の原因は、資本主義でもなく、不平等でもなく、家父長制度でもなく、性差別、人種差別、ゲイ恐怖症、外国人恐怖症でもない。その最大の理由は、信仰がないこと、神がいないこと、結婚していないこと、コミュニティーがないこと、心のよりどころとする国家を持たないこと。つまり、人生の意味を見いだせないことだ。これが、人々の不幸の源である。

伝統的な宗教が空白となり、代わりに台頭してきたのが世俗的な左翼思想である。しかし、ユダヤ教やキリスト教とは異なり、左翼思想が人々に幸福を与えることはないだろう。

執筆者紹介
デニス・プレージャー(Dennis Prager)

アメリカの保守系ラジオ番組司会者、ライター。保守派の観点から、政治、経済、哲学的な問題について発言している。

この記事は英語版大紀元への寄稿記事です。

(大紀元日本ウェブ編集部)