中国電子商取引最大手のアリババグループは26日、香港証券取引所に上場し、初日の取引で875億香港ドル(約1兆2000億円)の資金を調達した。専門家は、米政府が中国企業に厳しい姿勢を示しているため、今後アリババのように香港株式市場に進出する中国企業が増えると推測した。
香港情勢が緊迫化した現在、中国巨大企業の香港株式市場への上場が注目を集めた。
米サウスカロライナ大学の謝田教授は、米政府と議会が米上場の中国企業に厳しい姿勢を示したことで、「アリババも、その株主構成が米政府に知られることを危惧して、香港市場に上場したのではないか」との見方を示した。米国に亡命した中国人富豪の郭文貴氏は、江沢民元国家主席の一族がアリババやテンセントなど大手企業を実質的に掌握していると暴いたことがある。
米上院と下院は6月5日、米株式市場に上場する中国企業に米政府による監督を受け入れることを義務付ける法案を提出した。法案は、監査資料や財務諸表を提出しない企業は上場廃止されると規定した。
投資家の張氏は大紀元に対して、「米政府からの圧力によって、アリババは米市場から香港市場に移らざるを得なくなった。アリババはまだ信用があるうちに香港に移ると決めたのだろう。上海や深センの株式市場ではなく、香港を選んだ理由はやはり米ドルを獲得したいからだ」との見方を示した。
また、台湾の経済金融評論家・謝金河氏は26日、フェイスブックに、アリババに続きテンセントや小米(Xiaomi、シャオミ)、百度、網易などの現在米市場に上場している中国大手IT企業も香港市場に新規株式公開(IPO)を検討する見通しだと投稿した。
同氏は、アリババの香港市場上場は「米中ハイテク技術新冷戦の始まりだ」との見方を示した。香港証券取引所は現在、中国の人工知能や顔認証技術のスタートアップ企業、曠視科技(Megvii)の上場を審査している。同社は米市場への上場を計画していたが、米政府が10月に同社を禁輸措置対象リストに追加したことを受けて、米国への上場を断念し、香港証券取引所にIPOを申請した。
また、米有識者や当局者は米金融市場で資金を調達する中国企業への締め出し姿勢を強めている。
今年3月に設立された外交政策組織、「現在の危険ー中国に関する委員会(Committee on the Present Danger:China、CPDC)」の委員長を務めるブライアン・ケネディ氏は11月14日に行われた記者会見で、米中間の貿易不均衡よりも金融セクターにおける不均衡の方が深刻だとの見方を示した。
同氏は「中国共産党は米国に経済戦争を仕掛けた。トランプ大統領は対中貿易赤字を強調しているが、対中金融赤字の方が重要だ」と話した。トランプ政権に、さらに厳しい措置を実施して米国から中国企業を排除するよう求めた。
大紀元英語版は10月31日の報道で、米国家安全保障会議(NSC)高官のロジャー・ロビンソン氏が、中国当局が米国金融市場から調達した資金規模は数千億ドルから1兆ドルに向かって拡大していると強い懸念を示したと伝えた。
CPDCは、政府と議会に対して、連邦政府職員向け確定拠出年金(TSP)の中国株投資の禁止を求める請願書を提出した。CPDCは、一部の中国企業は米の国家安全保障を脅かし、人権侵害にも加担しているとした。
ロイター通信によると、アリババは当初、8月に香港上場を計画していた。香港での抗議活動を受けて11月に延期した。
27日、トランプ米大統領は香港の高度な自治と人権尊重を支持する「香港人権・民主主義法案」に署名し、同法が成立した。同法に基づき、米国務省は毎年、香港の自治状況を検証し年次報告書を議会に提出するように義務づけた。
香港での高度な自治が保たれていないと判断されれば、香港に対する関税やビザなどの優遇措置が見直される。これによって、国際金融センターとしての香港の地位が落ちる可能性がある。中国当局やアリババと他の中国企業にとって、懸念材料となっている。
(翻訳編集・張哲)