中国の習近平国家主席が11月2日、上海市長寧区を視察した際、初めて「全過程の民主」に言及したことに注目された。
習主席は2日、長寧区虹橋街道の古北市民センターを訪ねた。同区の古北地区には3万人以上の市民が住んでいる。その半分以上は外国人だという。習氏は市民センターに集まっていた中国人と外国人市民に向けて発言を行った。
「われわれは、中国の特色のある社会主義政治発展の路線を歩んでいる。人民の民主とは、ある種の全過程の民主である。すべての重要な立法の決定は手順に従い、民主的な下相談を経て、科学的な決断や民主的な決断を通して決められる」
国営新華社通信は3日、短い評論記事の「新華微評」を掲載し、「全過程の民主」を解釈した。「『全過程の民主』の真諦は、よく話し合うことにある。みんなのことはみんなで相談し合う。十分に相談することによって、全国民の最大の望みと要求が分かるので、問題を有効に解決する方法が見つかる。したがって、人民が一家の主となることができ、国家や社会の各種の事柄を管理する民主的な権利を実現できる」
中国共産党機関紙・人民日報が、習氏の古北市民センター視察の報道を行った際、「全過程の民主」の部分を省いた。新華社通信も、「新華微評」を除けば、同内容に触れなかった。
いっぽう、英BBCなどの海外中国語メディアは習主席の発言に注目した。BBC中国語電子版は4日、中国当局が意図的に「中国式の民主主義」を定義しようとしているとの見方を示した。仏ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語電子版は、「毛沢東が過去、米国式民主主義を実施したいと述べたが、中国当局は1日も民主主義制度を実行したことはない」「当局は言論の自由さえ許さないのに、どうやって民主主義を実現するのか」などと批判した。
毛沢東は1944年7月、延安で米国人代表団と会見した際、「わが党の最大の目標は、独裁体制の国民党を打倒し、米国のような民主主義制度を確立し、全国国民に民主主義による幸せな生活を送らせることだ」と述べた。
中国人ネットユーザーらは、海外のソーシャルメディアで、習近平氏の「全過程の民主」に関する発言について、「意味がわからない」「政治的なスローガンに過ぎない」などと異議を唱えた。
中には「人民の民主とは、全過程において政権に監視される民主である。すべての立法の決定は、党首が段取りした手続きで行われ、最高指導部での話し合いを経て、党が裁定を行い、野次馬である国民が見物する中で決められる」と解釈をした人がいた。
(翻訳編集・張哲)