香港市民は8日、香港の高度な自治を守る「香港人権・民主主義法案」の早期成立を求め、米国総領事館までデモ行進した。数万人が参加した。終了間際、警察は催涙弾などを使ってデモ隊の強制排除に乗り出した。市民数人が拘束され、負傷者も出た。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が4日、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を表明したが、事態が収束する兆しはなく、連続14週目のデモとなった。
6月13日、マルコ・ルビオ米上院議員らの上下両院の超党派議員が同法案を提出した。法案は、米政府に対して香港の高度な自治を検証するよう義務付けるほか、「香港の自治と民主・自由を圧迫する者や責任者に制裁を科す」と定める。米議会で近く審議が再開される可能性がある。
香港市民は8日午後1時半~6時半まで、遮打花園(チャーター・ガーデン)で法案の可決を求める集会を開いた。また、一部の市民は午後2時半から、米国旗を掲げてデモ行進した。警察が米総領事館の近くでバリケードを設置したため、デモ参加者らは総領事館に近づけなかった。総領事館は職員を近くの幹線道路、下亜厘畢道に派遣し、市民からの請願書を受け取った。
香港人女優の葉德嫻氏(71)は、英語で書かれた「どうか『香港人権・民主主義法案』を可決させて」のプラカードを掲げてデモ行進に参加した。大紀元の取材に対して、「米政府が香港(市民)を助けてくれることを望む」と述べた。
歌手の阮民安(トミー・ユエン)氏(39)は、林鄭月娥行政長官が先週「逃亡犯条例」改正案の撤回を発表したことについて、「市民が求める他の4つの要求には応えていない」と不満を示した。同氏は、8月31日、地下鉄駅構内で、香港警察が無差別に市民を攻撃したことを強く非難した。事件の全貌を市民に明らかにするよう、「警察当局は、当時の駅構内の防犯カメラがとらえた様子を公開すべきだ」とした。
大学生のジェイさんとアレックスさんは、米議会が法案を可決することによって「中国共産党は香港人への締め付けを少々ためらうだろう」と語った。2人は「米政府が香港市民の人権、香港における高度な自治を守るよう希望する」と話した。
他の大学生のレックスさんは、「香港の繁栄と安定を維持するのは簡単だ。共産党こそが香港の自治に干渉しなければ、それはできるからだ」と言った。
大学生らは、香港政府が「5大要求」をすべて受け入れるまで、抗議活動を続けていくと示した。
一方、警察当局は同日午後4時ごろ、地下鉄の中環駅を封鎖した。警官隊は同駅の構内に入り、抗議者3人を拘束した。これを受けて、デモ進行の主催者はネット上で活動の中止を発表し、参加者に早めに帰宅するよう呼び掛けた。
一部のデモ参加者が中環駅の出口にバリケードを設置したため、警官隊が駅構内から外に向けてゴム弾を発射した。その後、警察は中環、湾仔(ワンチャイ)、銅鑼湾(コーズウェイベイ)などの各地で強制排除に乗り出した。警官隊は銅鑼湾で抗議者に向けて催涙弾数発を放ち、九龍島の旺角(モンコック)警察署の前に集まった市民らにゴム弾やビーンバッグ弾などを発射した。
香港地下鉄は同日夕方、湾仔駅など各地の駅を閉鎖した。
香港の医院管理局によると、8日夜9時半時点で、強制排除で負傷した年齢14~39歳までの男女10人が2つの医療機関に搬送された。
立法会(議会)の葉建源議員は8日、警官らの近日の抗議活動に参加した10代の中高生への暴行が激化していると強く非難した。
8日、「香港人権・民主主義法案」の早期可決を求めて、米のウィンストン・ロード元駐中国大使、カナダのデビッド・マルルーニー元駐中国大使など、欧米などの政治家や学者80人以上が、米上下両院の政治家12人に対して、連名で公開書簡を送った。
チャック・シューマー米上院院内総務(民主党)は5日、「法案を通過させることが、来週の民主党の主要任務だ」と述べた。
公開書簡の署名を呼び掛けた1人、米ノートルダム大学の許田波助教授は大紀元に対して、「米議会はこの法案を通過させなければならない。他の国も同様な措置をとり、(中国当局者に)制裁を実施し始めるべきだ」と話した。
(記者・梁珍/王文君、翻訳編集・張哲)