韓国は8月22日、日韓の軍事機密の共有に関するルールを定めた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表した。韓国大統領府は同日、この協定の継続は「韓国の国益と矛盾している」とした。日本や米国は、3カ国による東アジアの安全保障に影響を与えかねないと懸念を表明している。
問題の発端は、韓国が大量破壊兵器製造に転用可能な物資をシリアやイランなど北朝鮮の友好国に不正輸出したことが発覚したことにある。日本が韓国への輸出管理の見直し、貿易管理上の優遇対象国から韓国を除外した。この措置について、韓国側は22日「安全保障上の関係が変化した」とみなし、「軍事情報交流を目的にした協定を維持することは韓国の国益に合致しない」と説明した。
世耕弘成経済産業大臣は、8月初旬の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)会議を含めて、韓国に対する輸出入管理強化措置は禁輸ではなく、RCEP加入の東アジアの他国と同等の扱いになるだけだと繰り返し説明してきた。
日韓はこれまで米国を介して秘密軍事情報を共有していたが、2016年11月にGSOMIAが締結されたことによって、直接やり取りすることが可能になった。
日本は偵察衛星7機、沿岸の観測所や飛行機で北朝鮮の電波情報を収集し、弾道ミサイル発射などの情報を入手している。日本は、韓国とだけではなく、同じような軍事情報協定を米国、英国、フランス、そして、NATO(北大西洋条約機構)とも結んでいる。
FNNの取材に応じた海上自衛隊の元海将・伊藤俊幸氏は、GSOMIAのメリットは韓国の方により多く「北朝鮮が発射するミサイルの着弾点や高度、飛行距離などを分析する技術は、日本の方が高い」と述べている。
米国は、国家安全保障問題担当ジョン・ボルトン大統領補佐官やマーク・エスパー新任国防長官が訪韓し、GSOMIA維持を呼びかけていた。
在韓米軍特殊戦司令部での勤務歴のある、ワシントンの民主主義防衛財団に所属するデービッド・マクスウェル氏は米ボイス・オブ・アメリカの取材に対して次のように述べた。「軍事情報のやり取りに影響が出る。今後、米国を介して情報を共有することになるだろう。ただ、日本または韓国が第三国経由の情報共有を禁止にすれば、状況はさらに悪化する」
佐藤正久外務副大臣は23日、「安全保障と輸出管理をリンクさせ、自国のみならず地域の不安定化にも繋がる愚かな決定との批判も出よう。あたかも朝鮮戦争は起こらない、北朝鮮融和にさらに踏み込む意図も背後にあるのかも。在韓米軍存在意義にも影響しかねない」とツイートした。
韓国のカン・ギョンホ外相は、日韓軍事情報共有協定の破棄は「米韓同盟とは無関係の問題」と述べ、「日本との信頼問題」を強調した。
いっぽう、マックスウェル氏は、この動きは米韓同盟と無関係ではないとしている。「(協定破棄は)3カ国の国家安全保障を破壊したが、その中でも韓国が最大の損失を受けるだろう」
米国防総省報道官デーブ・イーストバーン氏は23日、「日本と韓国が協力して早期に解決するよう促したい。米国、日本、韓国の団結と友好で、北東アジアはより安全になる。軍事情報の共有は、共通の防衛ポリシーと戦略を開発するための鍵だ」と発表した。
米政府は語調を強めて「韓国政府の決定に強い懸念と失望を表明する」と声明を出した。「安全保障上の連携は経済、貿易などの分野での摩擦に影響されることなく、維持されるべきだと信じている」と付け加えた。
(編集・佐渡道世)
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