トランプ大統領は7月14日頃から、4人の移民系新人女性民主党下院議員についてツイートを繰り返している。以降、左派メディアを中心に大統領の発言を「人種差別的だ」と相次ぎ報じた。これについて、米公共ラジオ(NPR)は、メディアが独断でレッテル貼りすることは危険であり、信頼性に関わると警告した。
NPR上級編集員マーク・メモット氏と同社報道室副代表キース・ウッド氏は17日の放送で、大統領のツイッター発言を「人種差別的」と伝えるニュースがかなり多くなったため、この強い印象を与える言葉の使用について、議論を交わした。
両氏は、ジャーナリストが報道に独断的なレッテル貼りをする行為に警告を発し、事実を受けた読み手が人種差別主義者かどうかを決めるべきだと主張した。また、レッテル貼りは業界の信頼性が失われかねないと危機感を示した。
かねてから、移民系の民主党下院議員4人は、社会主義を支持し、米国内の移民、女性、イスラム教徒、性的少数派、左翼思想組織の権利強化を訴え続けている。その中の一人、アレクサンドラ・オカシオ・コルテス議員は不法移民収容施設について「強制収容所」と例えた。
大統領は18日、ノースカロライナ州での演説で、「彼女らは左派イデオロギー信奉者で、米国を邪悪な勢力とみなしている」「米国憲法を破壊しようとしており、素晴らしい建国の価値観を壊そうとしている」と重ねて批判した。
大統領の発言について、米下院は16日、「人種差別的な発言」と非難する決議を可決した。下院議員には4議員の所属する民主党議員が過半数を占める。
大統領は「米国がそんなに嫌なら出ていくことはできる。戻ってきてもOKだ。嫌いならばいる必要はなく、出る自由がある」と、ツイッターやホワイトハウスにおける記者会見で語っている。あわせて、「米国は社会主義や共産主義の国にはならない」と強調している。
ウッド氏は、報道機関がトランプ大統領の発言を安易にレイシストだと断じるメディアを批判した。「大統領の扇動的な発言に、レッテルを貼りたがる道徳的な怒りを、私は理解する。しかし、同意はしない。冷静になって距離を置くことがジャーナリズムの道徳だ」
同氏は、ジャーナリズムは、弱者に寄り添うような温かみのある「人種差別的な偏見だ」「人種差別的に鈍感だ」などの言葉を使用できるが、「レッテル貼り」は、ジャーナリストの仕事ではない、とした。
ウッド氏は、大統領のレイシスト基準を報道機関が定めることは間違っていると見ている。「すでに私たちの人種や差別の基準は、数十年前には策定されているはずだ。この基準設定は、ジャーナリストがする仕事ではない」
ウッド氏は、道徳的な概念基準の策定は、有識者、思想家、オピニオンライター、哲学者の仕事であり、彼らがその仕事を行い、「私たちの仕事はただジャーナリズムを行うことだ」と強調した。
(翻訳編集・佐渡道世)
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