中国当局は24日、深刻な信用リスクがあるとして、内モンゴル自治区の金融機関・包商銀行を接収した。中国政府系メディアは、今後信用リスクの高まりで国内金融機関の倒産が増えるとの見通しを報道したが、その後、記事を削除し謝罪した。
中国紙・証券時報傘下メディア、「券商中国」は5月29日、金融管理当局の情報筋の話として、農村部および都市部の一部の商業銀行は深刻な信用リスクに見舞われ、破たんの可能性が高いと報じた。
「券商中国」は同日、記事を掲載した直後に取り下げた。翌日に発表した声明で、「信用リスクに関する表現は事実と違った」として謝罪した。中国当局からの圧力があったとみられる。
一方、中国メディアは最近、金融不安に注目している。各メディアは、中国人民銀行(中央銀行)が昨年11月に発表した「中国金融安定報告(2018)」を引用し、420の金融機関が、極めてリスクが大きいと見なされる評価8以上(最高評価が1、最低は10)に分類されたと言及した。最高評価を受けた銀行は2行だけだった。当局が2018年1~3月期に、国内4000以上の金融機関を対象に、初めての金融リスク審査を実施したという。
また「中国経済網」などのメディアは5月30日、中国人民銀行が、今後の金融機関の破たん増加に備えて、100億元(約1600億円)を出資し、同月24日に預金保険ファンド会社を設立したと報道した。人民銀行金融安定局の黄暁龍・副局長が、同社の法人代表者や執行役員などを務めるという。
中国当局は2015年5月に預金保険制度を導入した。この制度では、銀行が破たんした際、最大50万元(約800万円)までの預金が保証されると定めている。
包商銀行の接収を含めた一連の動きから、中国では金融危機発生への不安が一気に広がった。金融業界の関係者は「接収というよりも事実上の破たんだ」とみて、今後中国の中小銀行の倒産が急増すると予測した。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)30日付によると、一部の中国国内メディアは、人民銀行が「金融機関の接収リスト」を作成したと伝えた。専門家は、米中貿易戦で中国経済が一段と失速したことによって、不良債権問題が深刻化し、都市部などの中小商業銀行におけるガバナンスやリスクマネジメントの問題も浮き彫りになったと指摘した。
中国国内の経済学者はRFAに対して、中国当局が大手金融機関の破たんを回避するために、これまでと同様に莫大な資金供給を行う可能性が高いとの認識を示した。「中国当局は紙幣を印刷し続けるしかない。過去の大躍進政策と同じく、当局は資金供給によるインフレで国民生活が受ける打撃を度外視するだろう」
(翻訳編集・張哲)
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