「中国の工作員にされないで」米ジャーナリスト、中国のスパイスカウトの手法を分析

2018/11/05
更新: 2018/11/05

「ノートパソコン、女、教育資金をくれる中国のスパイに気を付けよう。特に、リンクトイン(LinkedIn)からの怪しいリクエストに気を付けて」

米ジャーナリスト、ギャレット・グラフ(Garrett M.Graff)氏はこのほど、ビジネス誌「WIRED」に寄稿した。グラフ氏は中国工作員のスパイ活動に警戒し、中国情報機関のスパイにされないよう呼び掛けた。同氏は過去20年間、中国のスパイ活動は、広範囲におよび強い破壊力があり、国家の安全にとって最大の脅威だと繰り返して警告してきた。

米司法省は10月30日、中国情報機関・国家安全省の幹部とハッカー10人を訴追した。司法省は、中国工作員が米航空企業から商業機密を盗もうとし、さまざまな策略を企てたと指摘した。

9月以降、中国の産業スパイが訴追されたのは今回で3回目。10月上旬に、複数の米航空宇宙企業から企業機密を盗んだとして、ベルギーから身柄を引き渡された中国工作員の徐彦君(Yanjun Xu、音訳)氏を逮捕・訴追した。徐被告は中国江蘇省国家安全庁第6局副処長(次官)で、GEアビエーション社のジェッドエンジン技術者を中国側の商業スパイにスカウトした。

いっぽう、グラフ氏は過去の事例を分析し、中国情報機関が欧米人をスパイにスカウトする際、5つのステップがあると指摘。

ステップ1:ターゲットを定める

正式な接触の前、「スポッター(spotter)」と呼ばれる中国の調査員が、ターゲットについて調査・評価を行う。そして、その結果を情報機関の幹部に提出する。幹部らは、正式なスカウトに値するかを再評価する。スポッターの多くは、シンクタンク、大学、企業幹部であり、スカウトに直接関与していない。

前述の徐延君氏の案件では、元中国人留学生の紀超群氏が徐氏の「スポッター」を務め、ターゲットとなりうる人物を物色していた。

紀氏は中国の情報機関に対して、少なくとも中国系研究者8人の情報を提供した。米政府によると、8人のうち、7人は国防事業の下請け企業の現役社員、または定年退職者だったという。

ステップ2:評価

ターゲットになった米技術者をスパイ活動に駆り立てるため、さまざまな手段で動機づけをする。金品の供与、イデオロギーの宣伝、脅迫、またはスパイ生活のスリル感を味わせるなどなど。

中国当局は、中国人をスカウトする場合、脅迫や愛国心の利用などの手段を多用している。欧米人に対しては、金品の提供が多い。

米連邦捜査局(FBI)は今年6月、国防情報を中国に渡そうとしたユタ州に住む米国人の男性を逮捕した。米国防情報局(DIA)の官僚だった男性は定年退職後、多額な債務を抱え生活が困窮していた。2014年以降、中国国家安全省の職員2人が男性に接触してきた。15年中国を訪れた男性に対して、2人は今後「毎年30万ドル(約3384万円)の顧問料を支払う」と約諾した。男性は17年まで、米国内で国防関連の会議に参加し、写真を撮影したり情報をメモしたりした。また、以前の同僚に連絡するなど、人脈構築を試みた。

ステップ3:発展

中国の工作員はターゲットとなった欧米人に、直ちに祖国への反逆を求めることはない。まず気づかれないように良好な関係づくりに腐心する。米中央情報局(CIA)ブレナン前長官は、「(スパイになった米国人が)気づいた時点ですでに時遅し」とその手口は巧妙だと述べた。

2001年中国に留学し、その後中国上海に移り住んだバージニア州出身の大学生、グレン・シュライバー(Glenn Shriver)氏は04年、諸外国の貿易白書の作成スタッフを募集する新聞広告を見て、応募した。広告を掲載した中国人が、シュライバー氏に120ドル(約1万3537円)の論文作成費を支給し、同時に2人の男性を紹介した。学生と2人の男性は親しくなるにつれ、男性らは学生に対して、米への帰国、米の国務省またはCIAでの就職を薦めた。

中国の情報機関は大学生に採用試験の参加費として、3万ドル(約338万円)を与えた。大学生は2回採用試験を受けたが、2回とも失敗した。2007年、CIAの秘密プロジェクトの採用試験にも応募した。中国情報機関はその際、学生に4万ドル(約451万円)を渡した。

大学生はその後、逮捕された。米諜報当局は大学生をモデルにした啓発ビデオを作成した。海外に留学している米国人学生に対して、中国人工作員からの誘惑に警戒を高めるよう呼び掛けた。

ステップ4:スカウト

ターゲットとなる人に対して、中国情報部員は時にストレートにスパイ行為の強要を切り出す。2017月2月、CIA元幹部のケビン・マロリー(Kevin Mallory)氏がソーシャルメディアのリンクトインで、中国の上海社会科学院の職員と自称する人物からリクエストを受け取った。

FBIは、中国国家安全省は、中国社会科学院と連携して活動していると指摘した。社会科学院の職員と名乗る中国の工作員は多く存在するという。

マロリー氏はその後、電話を通じてこの上海社会科学院の職員と連絡を取り、17年4月に中国で2回面会した。そこで、マロリー氏は特別な電話機を受け取り、安全なメッセージ機能を使って中国の「顧客」に連絡する方法を教えられた。マロリー氏は中国の対米政策白書の作成に2回協力した。

ステップ5:処理

スパイとその指令役(handler)の連絡方法は以前の直接会うことから、現在暗号化された通信機器の利用に変わった。

FBIは今年1月、中国情報機関の指示を受けて米国内でスパイ行為を繰り返していたとして、CIA元職員の李振成(英語名、Jerry Chun Shing Lee)氏を逮捕・起訴した。

起訴状によると、2010年4月李氏は中国の工作員2人に会った。工作員は李氏に金品の供与を約束し、その見返りとしてCIAに関する情報の提供を求め、「密かに連絡するために、李氏に複数の電子メールアドレスを提供した」

李氏のノートパソコンに、CIAのオフィスの住所や1件の機密諜報計画の実施場所などの資料が保存されていた。李氏は、この情報を娘名義のメールアカウントから中国側に送信した。

グラフ氏によると、FRIが李氏のカバンなどを捜査した際、李氏のシステム手帳から手書きの機密情報を見つけた。米情報機関職員らが会議で言及した諜報計画、計画関係者の電話番号、米側情報部員の実名とCIAの秘密施設などが含まれていた。

(翻訳編集・張哲)

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