スイスのローザンヌで10月19日から開かれる予定だった人体標本展について、市当局は中止を決めた。倫理団体は、展示遺体が法輪功学習者を含む中国の囚人である可能性が高いとして、苦情を申し立てていた。
ローザンヌのコンベンションセンターで開かれる予定だった人体展覧会「リアル・ヒューマン・ボディーズ」は、生物を半永久保存できる技術(プラスティネーション)で加工された、実際の人体が使用されている。これまでオランダ、ベルギー、スイス首都ベルンで巡回展示会が開かれた。
展示会中止は、キリスト教団体「拷問と死刑廃止のためのキリスト教徒行動(ACAT)」が苦情を申し立てたことによる。ACATは、展覧会で使用された遺体は拷問で死亡した、あるいは死刑執行された中国の囚人や、中国共産党政府が非合法化し、拷問を伴う弾圧を受けている法輪功のメンバーである可能性が高いと主張する。
ACATの申し立てに続き、ベルン市およびローザンヌ市当局は展覧会主催者側に、展示遺体の出所証明書と、標本となった人物本人あるいは家族からの展示同意書を提出するよう求めた。しかし、主催者側が提出しなかったため、ローザンヌ市は中止を決めた。
スイスメディア・24時間によると、スイスの人体標本展に関わった人物は「すべての証明はある。人体は米国からの献体だ」と述べたという。しかし、証明提出には至らなかった。
倫理疑問引き起こす人体展 遺体は誰なのか
人体展主催者からは、出所や本人や家族からの展示への同意証明書が提出されなかった。「多くのことがわからず釈然としない」とローザンヌ市議会議員ピエール=アントワーヌ・ヒルドランド氏は現地紙に述べている。
スイスには、すべての人に死後の遺体処理や明確な条件を決定する基本的な権利がある。市当局は、主催者側の遺体に関する疑念を払しょくできないため、人々の感情を害する可能性が高いと述べた。
2017年にはジュネーブで、世界巡回人体展「ボディ・ワールド」が開催され、議論を巻き起こした。現在、同展示会は英国ロンドンで開催されている。
オーストリアのシドニーでは今年4月から10月まで人体標本展「リアル・ボディ」が開催されている。主催側は、人体標本が献体であることを証明していないが、主催した企画会社CEOは、豪メディアnews.com.auの取材に対して、中国由来の人体であることは明らかと述べた。
中国出身の法輪功学習者の男性は、展示人体の中には中国で消息を絶った、同じく法輪功学習者の弟が含まれているかもしれないとして、展示人体のDNA鑑定を要求した。
豪州ウェスタン・シドニー大学医学部教授ボーガン・マスフィールド氏は、たいてい医科大学の所有する献体は高齢者だが、展示会の人体標本は「若い男性が多い」と指摘した。
(編集・佐渡道世)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。