米国の環境ジャーナリストのビンス・バイザー(Vince Beiser)氏は9月6日、ワシントンで開かれた環境フォーラムで、地球環境と生態を支える土砂が、危機的な状況に直面していると述べた。同氏は特に、中国の工業が事態を深刻化させていると指摘した。
バイザー氏によると、中国は2016年に78億トンの工業用土砂を使用し、向こう数年で100億トンを超えると予想されている。バイザー氏は8月7日、世界の土砂と環境についてまとめた著作『砂の世界:文明と砂の話』を発表した。
現在、中国の都市部は5億の人口を有し、高層ビルなど建造物に工業用土砂は大量に使用される。ベイザー氏の調べによると、中国が2011年から2013年までに使用したセメントの量は、米国が20世紀に使った総量に等しい。
たとえば、2000年以降に摩天楼が立ち始めた上海では、超高層ビルの数がニューヨークよりも多いという。
都市の急速な発展に伴い、上海は長江(揚子江)の底から大量の土砂をすくい上げ、工業用砂に加工して建設に使用してきた。継続的な大量採取により、河川の生き物は生活環境を失い、河川敷は変容した。
中国政府は長江からの土砂の採取を停止したが、今度は長江南部にある湖・鄱陽(はよう)湖から、砂岩の採掘を始めた。この湖は現在、世界最大の砂岩採掘地区となっている。過剰な採掘により、湖の水位は低下し、長江を流れる水量は減り、水位は低下を続けている。
またバイザー氏は、中国では土砂と岩を盗む土砂泥棒がいて、環境生態学と飲用の水源が危機に瀕(ひん)していると指摘した。「中国での調査は難しいが、砂や岩の泥棒は確かにある」と強調した。
北京周辺でも、土砂泥棒による被害が少なくとも10年以上続いている。地方当局は、違法な土砂採取を取り締まっているが、根本的な解決になっていない。一部には武器をもって土砂を奪取していく、ならず者の集団もいるという。
北華地域では最大河川である潮河にも、土砂泥棒の被害がみられる。潮河からの流水は密雲ダムに溜(たま)り、北京の重要な飲用水の源となっている。河川に重機を侵入させる土砂どろぼうは、水質汚染につながっている。
海外でも土砂を大量使用
バイザー氏はさらに、中国は世界でも、人工島やサンゴ礁埋め立てのために大量の土砂を使用しており、世界は警戒するべきだと指摘する。
中国は世界最大の埋め立てプロジェクトを行っている。特に南シナ海では、地政学的な戦略で、スプラトリー諸島などの島しょ部の拡張工事を続けている。
講演でバイザー氏は「中国は海底から何百万トンもの砂と砂利をポンプで吸い上げ、岩に堆積させ、新たな人工島を建造している」と述べた。
中国の軍事拠点と化した島々には、核兵器を搭載できる爆撃機が着陸できる滑走路、潜水艦が接岸できる港湾施設、地対空ミサイルなどが配備されている。
中国企業がスリランカで建造している、総建設費用14億ドルと試算されるコロンボ港は、周辺施設に60階建てのビルが3棟並ぶという。土砂をポンプで吸い上げて、一帯を埋め立て、建造している。
バイザー氏は、土砂泥棒や海外プロジェクトにおける土砂採取は中国に限ったものではなく、他国でも行われていることだが、国際的な法律で規制されるべきだと主張している。
(翻訳編集・佐渡道世)
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