東シナ海における中国の海洋進出が進むなか、南西地域の防衛強化のため、自衛隊は10月末に沖縄周辺の海域・空域で行われる日米共同統合演習「キーン・ソード(名刀)」に臨む。
陸上自衛隊で3月に発足した、日本版「海兵隊」とされる水陸機動団は、米海兵隊と主に、敵勢に侵攻・占拠されたことを想定した離島奪還訓練を実施する予定。
2016年に行われた前回のキーン・ソードでは、陸海空の3自衛隊から2万5000人、米軍からは陸海空および海兵隊から1万人が参加した。
これに先立ち、水陸両用作戦を主とする海上自衛隊の新設部隊・水陸機動団は、10月にフィリピン海で実施される米比合同訓練「肩から肩へ(KAMANDAG)」にも参加することが発表されている。水陸機動団の参加は主に災害対応訓練とされるが、日米比による合同訓練は、東シナ海と南シナ海で軍事行動を活発にする中国軍をけん制する狙いがある。
水陸機動団は、2013年に策定された防衛計画大綱に基づいて新編された陸上自衛隊の一部隊。2018年3月に発足した。約2100人を擁し、長崎県佐世保を拠点とする。外交防衛委員会によると、今後は3000人まで増員させる見込み。
主な任務は、南西諸島を外国勢力からの侵攻や襲撃を防ぐ離島奪還作戦で、中国の海洋進出に対する防衛作戦に従事する。
水陸機動団は発足以前から米海兵隊との共同訓練でレベルアップに臨んでおり、米海兵隊と同じAAV-7水陸両用強襲輸送車、V-22オスプレイを装備する。内外メディアは「日本版海兵隊」と表現している。
水陸機動団は2017年9月から10月、米比海兵隊と「肩から肩へ」、同年10月から11月まで米海兵隊と「ドーン・ブリッツ(夜明けの電撃戦)」、2018年1月から2月まで米海兵隊と「アイロン・ファースト(鉄の一撃)」の共同訓練にそれぞれ参加してきた。米軍とは離島奪還の共同訓練も行った。
5月には海上自衛隊とともに、九州西部と鹿児島県の種子島で基礎訓練を行い、6月からはハワイ海域における米国主導の合同環太平洋訓練リムパック(RIMPAC)に参加した。演習では、米海兵隊との小規模な訓練を実施した。
2018年8月に防衛省が発行した「防衛白書」によると、自衛隊はさらに南西諸島の防衛強化のため奄美大島、宮古島、石垣島に新たな基地を建設する。9月1日、防衛省は2019年度予算概算要求で、南西諸島地域の陸上自衛隊配備関連に193億円を求めた。
中国の脅威
しかし、日本が発足させた海兵隊に類似する部隊は、中国はすでに21世紀初頭に設置し、装備や人員の増強を続け海洋進出を拡大させてきた。90年代には台湾、沖縄、奄美、トカラ列島、九州を引く対米防衛ライン「第一列島線」の概念を定めた。
日本にとって、南西諸島に対する中国軍の侵攻阻止は、近年の国家的な防衛戦略の焦点となっている。
中国海軍の動きに詳しい、元海上自衛隊潜水艦長・山内敏秀氏は、ボイス・オブ・アメリカの取材に答え、日本の水陸機動団は中国の海兵隊に比べると経験や装備が不足していると指摘する。
中国の海兵隊である海軍陸戦隊は、1940年代に設立したが、1996年の台湾海峡危機を機に、規模を急速に拡大させてきた。2017年8月に米国国防総省が発表した中国軍分析の報告によると、中国の海兵隊は2020年までに、現在の3部隊1.5万人から7部隊3万人以上に拡充すると予測されている。
また米国防総省の分析では、中国海軍陸戦隊は、これまでの強襲上陸と南シナ海の基地防御から発展し、国外の遠征作戦を含む任務が可能な能力を得るとみている。2017年12月に公表された台湾の国防報告書によると、中国の海兵隊は将来、軍級の組織に拡大し昇格すると予測されている。
山内氏は、南西地域の防衛ほか海洋国家である日本は、海兵隊の役割は非常に大きいと強調した。
(翻訳編集・佐渡道世)
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