アジア太平洋地域の安定、台湾の現状維持にかかっている=米政府官員

2018/06/22
更新: 2018/06/22

米国務省のアジア太平洋担当次官補代理は6日21日、中国が圧力で台湾の国際的立場を変えようとしていることに、米国は非常に懸念していると述べた。また、台湾はトランプ政権のインド太平洋戦略において、重要な役割を果たすと語った。

米シンクタンクの新アメリカ安全保障センターが主催するイベントで登壇したアレックス・ウォン(黄之瀚)次官補代理は、中国共産党政府は、台湾が国際社会に貢献する機会を奪っていると非難した。たとえば、台湾が被災国や貧困地域にあてる人道支援、社会貢献、また世界保健機構(WHO)会議の参加など。

WHOは年次総会を5月、スイスのジュネーブで開いたが、中国の圧力を受け、台湾への招待を昨年に引き続き見送った。これについて日米豪の政府高官はWHOに対して遺憾の意を示した。

中国共産党政権は近年、世界各国の航空会社やホテルチェーン、アパレルメーカなどに対して、台湾・香港・マカオに関する表記や地図のカテゴリーを、中国当局の要求通りに変更するよう求めており、従わない場合の報復措置もちらつかせている。

日本航空(JAL)や全日空(ANA)はこのたび、中国民用航空局の要求を受けて、中国大陸で使用される中国語簡体字のチケット購入サイトの台湾表記を変更した。日本語や英語では変更していない。台湾外務省は18日、2社に抗議し訂正を求めると発表した。

菅義偉官房長官は19日の記者会見で、中国政府による台湾表記変更要求について「政府が民間企業に強制力をもって特定の政治的立場に基づいた措置を取るよう要求することは好ましくない」とし、懸念を示した。また、外交ルートを通じて中国政府に懸念を伝えたことも明らかにした。

米国務省ウォン次官補は、アジア太平洋地域の安定は、台湾が現状維持できるかどうかにかかっており、今の状況を変えようとする中国政府の動きに対して、米国は強い懸念を抱いていると述べた。

6月12日には、在台湾米国公館の役割を果たす米国在台湾協会(AIT)の新庁舎が完成した。ウォン次官補はAITを通じて、米国の対台湾、対中国政策を強化すると述べた。

米国は台湾について、インド・アジア太平洋の自由・民主主義の価値を象徴する存在だと位置づけているという。この価値の意義には、市場経済、国際社会の積極的な貢献、安全保障が含まれる。

安倍首相が提唱してきた「自由で開かれたインド太平洋戦略」ホワイトハウスでも強化へ

デイビッド・ヘルビー米国防総省アジア太平洋安全保障担当次官補佐官は、トランプ政権は台湾への武器販売も継続すると明らかにした。軍事的な見地から、「台湾は台湾海峡での自衛能力を確保する必要がある。現状を維持し、抑止力とバランスを保つためだ」と付け加えた。

ヘルビー補佐官とウォン補佐官は、トランプ政権のすべての部署は、 インド太平洋戦略の強化のため協働していると述べた。

安倍首相は2016年8月、ケニアで開かれたアフリカ開発会議での基調講演で、初めて「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱した。日本当局の米国に対する働きかけにより、2017年11月トランプ大統領もアジア歴訪前にこの戦略の参加を示した。

マティス国防長官は、5月に米軍の最大規模組織「太平洋司令部」の名称を「インド太平洋司令部」に改称すると発表した。

安倍首相は21日、首相官邸で、表敬訪問した米インド太平洋軍トップであるデービッドソン司令官と会談した。中国の海洋進出などを念頭に、首相は「インド太平洋軍は日本や地域の平和と安定にとって極めて重要」と述べた。また、あらためて「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋戦略」を強調し、米国と共に進めたいと述べた。

(編集・佐渡道世)