大富豪・呉小暉氏に懲役18年、1800億円の資産没収 習氏「迅速に処理」と指示

2018/05/14
更新: 2018/05/14

中国の上海第1中級人民法院(地裁)は10日、安邦保険集団元会長の呉小暉氏に対して、詐欺と職権乱用の罪で懲役18年の実刑判決を言い渡した。また、呉氏の個人資産105億元(約1800億円)を没収するとした。金額として過去最高となった。

中国政府系メディアの報道によると、2011年1月以降、呉氏は安邦集団や他の子会社に対して、財務諸表のねつ造を指示した。虚偽の財務諸表を基に、保険監督当局から高利回りの投資型保険商品の販売許可を得た。当局は、11年7月から17年1月まで、虚偽の財務諸表のほかに、呉氏は部下に偽の企業情報や増資活動、債務返済能力などの作成を指示して投資家から652億元規模(約1兆1175億円)の資金をだまし取ったとした。

また、呉氏は安邦集団が集めた保険料のうち、100億元(約1714億円)を横領したとされた。

在米経済学者の何清漣氏は呉氏が逮捕された直後の17年6月、同氏は二つの判断を誤ったと述べた。一つ目は2010年、当局が共産党高官の家族は経済界から身を引くようにと水面下で呼びかけたにもかかわらず、呉氏はこの流れに反し、飛ぶ鳥を落とす勢いで拡張した。もう一つは2015年夏、株式市場が暴落し、外貨準備高が急速に減少した。資本の流出をせき止めたい指導部の方針に反し、呉氏は理財商品などリスクの高い手法を通じて得た資金を海外投資に運用した。金融不安をもたらした一人とされた。

浙江省の農民家庭出身の呉小暉氏には3回の結婚経歴がある。最初の2回の結婚相手は地方政府幹部の娘だった。3回目に中国元最高指導者・鄧小平の孫娘と結婚した。

「紅い駙馬(ふば)」(古代、王女の夫に対する呼び方)に上り詰めた同氏は、中国共産党指導部の高官や親族らと繋がりを持つようになった。この人脈をフルに活用した呉氏は、安邦集団の事業拡大に成功し、同社は10年間で業界2位の会社に成長した。米高級ホテル「ウォルドルフ・アストリア・ニューヨーク」など派手な海外投資買収で知られる。

米メディアのラジオ・フリー・アジア(RFA)評論員の高新氏はこのほど、中国指導部関係者の話として、「習近平氏が呉小暉氏の案件について、『迅速に処理するよう』指示した」と述べた。

習近平氏は、中国の「紅い権貴集団」、特に江沢民一族の見せしめに、呉小暉氏への処分を急いだとみられる。また、上海で呉氏への判決を言い渡したのも、江派「上海幇(ばん)」を念頭に置いた行動だとも言われている。

中国指導部に近い情報筋は以前、大紀元に対して、安邦集団は元中央政治局常務委員の曽慶紅一族と緊密な関係を持っていると話した。すでに当局に拘束された富豪の肖建華氏と同様に、呉小暉氏も曽一族のために、「資金の海外移転やマネーロンダリング」を行ってきたという。また、呉小暉氏らは中国の大富豪として、ビジネス取引を通じて、外国政府高官に贈賄し、同政府における中国の影響力を拡大させる浸透工作も行っていたという。

在米中国人時事評論家の呉祚(そ)来氏は昨年9月台湾メディア「風伝媒」に寄稿し、「習近平氏は、中国政界における江派らの影響力の一掃だけではなく、江政権下で生じた、権力と資本の癒着である『権貴経済』を終結させようとしている」と指摘した。

ただ、これまでの経済犯罪の判例を見ると、呉氏に対する判決は軽いとも言える。

 

14年、当局は、女性富豪の丁書苗氏に対して、贈賄と違法経済利益取得の罪で、懲役20年の判決を下した。同時に丁氏の個人資産2000万元(約3億4280万円)を没収し、25億元(約429億円)の罰金を科した。罰金額は、中国共産党政権下で最高とされる。

10年、家電販売大手・国美電器(GOME)創業者の黄光裕氏は、贈賄とインサイダー取引などの罪を問われ、当局に懲役14年、罰金6億元(約103億円)、個人財産2億元(約34億円)没収の判決を言い渡された。

さらに、09年に不法集金と詐欺の罪で、女性実業家の呉英氏に対して、当局は死刑判決を言い渡した。呉氏は投資家から7億元をだまし取ったという。呉氏は同判決を不服として上訴した。法曹界からも量刑が重すぎるとの声が上がり、その後、当局は呉英氏への判決を猶予期間付きの死刑に変更した。

呉英氏と比較して、652億元をだまし取った呉小暉氏の懲役18年間の判決は、明らかに当局は呉小暉氏を手加減している。

(翻訳編集・張哲)