「パンダ誘致より市民生活」自公維新推薦の新人が当選=名護市長選

2018/02/05
更新: 2018/02/05

2月4日、沖縄県名護市長選の投開票が行われ、新人無所属・渡具知(とぐち)武豊氏(56)(自民・公明・維新推薦)が、現職の稲嶺進氏(72)(民進・共産・自由・社民・沖縄社大推薦、立憲支持)に約3400票の差をつけて当選した。これを受けて安倍首相・自民党総裁は5日の総理官邸で記者団に対して「現職市長を破るのは難しいと思っていたが、勝ってよかった」と述べ、渡具知氏が選挙中に訴え続けた名護市の観光振興、教育福祉の環境整備について「国としても応援したい」と語った。

得票数は渡具知氏が20389票、稲嶺氏が16931票。年代別開票結果では、10代、20代の有権者は6割以上が渡具知氏に投じたという。いっぽう、60~90代の6割以上は稲嶺氏を支持した。投票率は76・92%だった。

渡具知氏はSNSのPRでは、選挙活動にインパクトを与える自民党・小泉進次郎氏を迎えて、子育て環境、インフラ整備、観光振興などの公約をあいつぎ拡散した。当選確定直後のインタビューでは渡具知氏は「(前市長)2期8年、市民は閉塞感を感じていた。名護市の活性化を訴え続けたことで支持を集められた」と勝因を語った。

沖縄現地紙・沖縄タイムスは稲嶺氏敗因について5日の記事で記している。稲嶺氏は、新基地建設反対で立場を同じくする翁長雄志知事の支援を受けて、県とのパイプをアピールしたが、 「米軍飛行場の県内移設計画をめぐる最高裁の判断や、護岸工事が進行したことで、知事の求心力や説得力の低下を招き、辺野古反対の『正当性』が広がらなかった」と分析を示した。

稲嶺氏は、米軍基地辺野古移設問題に重点を置く選挙運動を展開し、「奇策」としてパンダ誘致を訴えていた。敗因について「残念だが移設問題は争点とならず、はぐらかされた」と肩を落とした。

稲嶺氏の掲げたパンダ誘致には、県内外から疑念の声があがっていた。中国へ支払うペア年間レンタル料8000万円。中国内陸部のチベットや四川省などの雪山地域を生息地とするパンダが、高温多湿で年平均気温23度の沖縄で生きるためには、冷房設備など備えたパンダ舎建造と竹笹のエサ代に少なくとも維持費3億円はかかるとされる。これは、市内の小中学校の給食費無料化を実現できる金額だ。渡具知氏の支持者は「パンダに笹を食べさせるなら給食費を無償化して」と反発していた。

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また、選挙区の名護市辺野古地区は下水道の不完備で、汚水以外の生活排水は海に垂れ流しされているなど、インフラ不整備も現地住民に問題視されていることが、1月29日付のテレビ東京の報道番組「ゆうがたサテライト」で報じられた。沖縄県本部公明党は1月29日、名護市嘉陽地区にあるゴミ処分場では、未処理のビニールゴミが半年以上放置され、悪臭やカラス被害、ハエの大量発生などを招いていると、公式Youtubeアカウントで動画とともに報じた。

(沖縄県公明党本部Youtube公式アカウント動画)

11月の沖縄県知事選の「前哨戦」とも言われた名護市長選。引き続き、知事選でも米軍基地辺野古移設は争点のひとつとなるとみられる。推薦者の勝利を受けて、自民党の塩谷立選対委員長は4日夜、「市長選は知事選に向けた大きなポイントであり、影響がある」と党本部で記者団に語った。安倍首相も5日、「危険と市街地に囲まれている普天間基地の移設を進めたい」と答えた。

(文・甲斐天海)