中国当局は今現在、北京など周辺地域の住民に供給する冬季集中暖房システムの燃料を、石炭から天然ガスへの切り替えを進めている。当局は、石炭燃焼が大気汚染物質の排出量増加につながるとして、石炭ボイラーの取り締まりを強化した。
寒さの厳しい中国北部の冬に欠かせないのが、「暖気」と呼ばれる集中暖房システムだ。温水やスチームを各住居内に通したパイプ内で循環させることで、屋内を温める。これまで石炭はおもな熱源として利用されてきた。
北京や河北省などの地域が近年、深刻な大気汚染に見舞われている。当局は、暖房供給システムに使用される石炭が、大気汚染物質の濃度上昇の主因だと認識している。
中国環境保護部は今年8月、北京をはじめとする4省の26都市に対して、10月末まで集中暖房供給システムの主要燃料を石炭から天然ガスに変更するよう通達した。
しかし、急進的な転換策で天然ガスの供給が不足し、一部地区で暖房の供給が止まった。寒さで体調を崩す年配者や子供が続出した。
また、天然ガスの価格は石炭より高いため、暖房費の高騰に多くの住民が不満を漏らした。
「私たちの地域で天然ガスの配管工事は全く進んでいない。政府に電話をしても対応する人がいない」と話したのは河北省廊坊市郊外に住む趙さん。趙さんは、同省に隣接する北京市に出稼ぎに行っていたが、同市当局が地方出身労働者を一斉追放したため、地元の廊坊市に戻ってきたばかりだ。
趙さんによると、村の集中暖房システム用の石炭ボイラーが強制撤去されたという。さらに、今石炭ボイラーで暖を取るのも禁止されたため、同村の年配者は厳しい寒さで次々と体調を崩した。中には病院に搬送され、危篤状態になった人もいるという。
12月に入ってから、北京市など北方地域では最高気温が10℃を下回った。郊外の農村部では気温はより低く、厳しい寒さを堪えている
「当局は最初、天然ガスの配管工事は無料で行うと話したが、今は工事料金を要求している。しかも、今日は3000元(約5万1000円)、明日になると4000元(約6万8000円)と、提示される料金価格はころころ変わる」「施工スタッフも専門業者ではない。工事中に火事が起きたなどの話を聞いたことがある」
天然ガス供給不足
いっぽう、熱源転換によって天然ガスへの需要が高まり、供給が追い付かない状況だ。河北省保定市などの一部地方政府はこのほど、天然ガス供給量を制限すると決めた。市民の生活やまた医療施設に大きな影響を与えている。
保定市にある河北大学付属病院はこのほど、天然ガスの供給不足で集中暖房供給システムが稼働できず、手術を行えないため、市に対して緊急供給措置を要請した。
河北大学の学生寮でも、暖房システムの稼働が難しいため、学生に対して「各部屋の窓と玄関を常に閉じるように」「厚着をしてください」との通知が貼られた。同校学生課の担当者は、「暖房をいつ正常に供給できるのかは、まだわからない」と話した。
また、中国メディアの報道によると、保定市曲陽県の小学校では11月中旬から暖房の供給がストップされているため、一部の生徒が凍傷を負った。
天然ガス料金が高騰
供給不足で、天然ガスの販売価格は値上がりした。11月末の価格は3カ月前と比べて約8割上昇した。中国国家統計局の統計によると、11月液化天然ガス(LNG)の価格が1トン当たり約5637元(約9万5829円)8月は1トン当たり約3129元(約5万3193円)だった。
北京市昌平区に住む劉さんは、自宅マンションの暖房料金は近く、現在の値段よりさらに36%値上がりすると話した。「党の高官ではない私たち庶民にとって大変な負担だ」
「当局の政策を実行するために、マンションの管理業者は建物の中にある石炭を使う暖房器具、さらに電気の暖房器具などを全部撤去した」「住民の私たちは暖房料金を支払っても、金儲けばかりを考える業者らは集中暖房システムを全く動かしてくれない。政府に陳情しても対応する人すらいなかった」、と劉さんが怒りをあらわにした。
中国国内インターネット上でも、当局の政策に批判が殺到した。
河北省石家荘市に住むネットユーザーによると、天然ガスの配管・設置工事費用は1世帯当たり4万元(約68万円)が必要だが、市政府からの補助金はいっさいないという。「収入の少ない家庭には本当に無理な話だ。(当局は)何も説明していない。今年石炭ボイラーを使えないし、どうやって冬を越せばいいのかわからない。恥知らずの共産党だ」と猛烈に非難した。
石家荘市の陳さんも、当局の今までのすべての政策は「無計画で、軽率だ」と話した。「各家庭の安全問題や供給問題などを全く考慮しない」と批判した。
また、ネットユーザーの投稿によると、「石炭を見かけたらボイラーをすぐに壊そう。煙を見たら家を取り壊そう」「石炭を燃やす人を見かけたら捕まえよう」など、過激なスローガンが書かれた横断幕が、町のいたるところで掛けられている。
(記者・顧暁華/簫律生、翻訳編集・張哲)
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