自転車シェアリング(レンタサイクル)のビジネスが急速に広がる中国だが、前向きな報道はあまり多くない。最近、南方都市報は、廃棄分となった自転車30万トン分の金属は、およそ5隻の空母分の重量に相当すると報じた。
同紙が6月12日に報じた、中国自転車協会の発表によると、2016年には全国で200万台のレンタサイクルが設置されたが、2017年はその10倍の2000万台になると見積もった。同時に、廃棄される自転車も急増している。協会の統計によると、廃棄自転車で生じたスクラップ金属は30万トンにもなり、空母5隻分の重さに相当する。
廃棄されたレンタサイクルは「鉄くずの山」と化す。スクラップになった自転車から再利用のために回収できる金属は、フレームなどごくわずかな部品のみで、4~5元(約70円)ほどの価値しかなく、解体には手間がかかり、紙よりも再利用価値がずっと低い。
また、レンタサイクルは価値を維持するために管理費がかかる。報道によると、1台740元の自転車8万台を備える杭州は、運用費用には一台あたり1000元かかる。
普及するレンタサイクルだが、中国国内では乗り捨てや転売など、ネガティブな面がしばしば報じられている。福建省のある街では600台のレンタサイクルを設置したところ、1カ月で500台が盗まれた。深センの公園では1万台もの乗り捨てられたレンタサイクルがうずたかく山積みされ、「レンタサイクルの墓場」となってしまった。
車よりエコ、便利 自転車シェアリングが人気のわけ
自家用車の所有率が上がり、大気汚染や道路渋滞などの社会問題が深刻化している中国で、自転車シェアリングは2016年末から急速に普及した。低炭素排出で低価格など利点は多く、スマートフォンのアプリなどで手軽に利用できる。
政府が推進し、レンタサイクルを運営する企業が有利な融資を得たことなどで、中国各地でブームとなっている。しかし、あまりにも短期間で急速に展開したため、対策を打つ企業側の努力だけでは解決できない問題が露呈している。
たとえば、問題の背景には現代中国の道徳低下、現地当局のずさんな管理などだ。モラルの低下により、共有物を大事に扱わない(損壊・遺棄)、私有物化にしようという行為(窃盗)など、社会的損失をもたらす問題が起きている。
さらに、地域全体の管理の問題もある。自転車は道路利用、駐輪場所、交通安全などのことも関連している。企業だけではなく、現地政府(都市計画、交通部門、警察など)もきちんと企業と連携して、管理監督を整える必要がある。
中国マイクロブログ・微博のユーザ「王永皓弁護士」は、「今のやり方では、自転車シェアリングの長所が生かされず、むしろ新しい社会問題を引き起こしている」と嘆いた。
(翻訳編集・佐渡道世)