今月15日に中国北京で閉幕された「一帯一路」経済圏構想の国際サミットについて、海外各メディアや専門家はこのほど、その構想をめぐって、投資規模減少の事実、当局の政治介入への懸念、参加国の政治経済的不安定など潜在的リスクの存在、と多くの問題点が残されていると指摘した。
「一帯一路」は形式上の話
在米中国問題専門家の何清漣氏は、米政府系ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に「一帯一路」について評論を寄稿した。何氏は当局が挙げた2つの新シルクロードにある多くの国はすでに中国と投資・貿易関係にあったと指摘した。
「現在、世界224カ国と地域のうち、中国はすでに170カ国と地域と経済貿易関係を築いた。この事実から、これらの国を「一帯一路」に組み入れるのは形式上の話に過ぎない」との見解を示した。
また何氏は、「一帯一路」に組み入れられた後、中国とその各国との経済貿易関係にどんな変化がもたらされるのかは、投資資金がどこから捻出され、どこに投資されるのかによるものだと示した。
投資規模は中国の対外投資総額の9%
海外メディアはこれまで、「一帯一路」の投資資金がどこから出るのかに注目してきた。現在の状況をみると、大部分は中国当局が拠出するものだ。しかし、中国の対外投資総額に占めるその資金の割合は少なく、他の中国国有銀行の投資にも及ばない。
英紙「フィナンシャルタイムズ」は中国商務部の統計を引用し、2016年に中国の対外投資は前年比で40%増加したにもかかわらず、「一帯一路」参加国への投資規模は同2%減り、また17年1~3月までの投資も同18%減少したと示した。
米誌「フォーチュン」は、16年中国当局は145億ドル(約1兆6211億円)の資金を拠出して、「一帯一路」参加国の鉄道や道路、港などを建設してきた。それに対して、同年中国の対米国直接投資(FDI)規模は456億ドル(約5兆981億円)に上ると報道した。両投資規模をみると、当局が高く掲げる「一帯一路」は米国での投資規模の3分の1にすぎず、中国の対外投資総額の9%しかないと指摘した。
また「一帯一路」投資資金を提供する側をみると、中で最も重要である中国国家開発銀行(CDB)の16年末時点の資金貸出残高は前年比で10億ドル(約1118億円)減の1100億ドル(約12兆2980億円)だった。
16年1月に、資本金1000億ドル(約11兆1800億円)で開業を迎えたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の融資規模は、日本主導のアジア開発銀行(ADB)の315億ドル(約3兆5217億円、16年末時点の実績)の1割以下。
これをみると、中国当局の「一帯一路」構想は「掛け声ばかり大きい」との印象が強い。
「一帯一路」で人民元国際化を狙う中国
中国当局が「一帯一路」国際サミットを開催する前、人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は「一帯一路」での物資、人力、技術などの協力活動において、人民元での決済を提唱したことが明らかになった。人民元国際化の加速化を狙う目的だとみられる。
周総裁は5月4日、金融関連誌「中国金融」の中国版ツィッター「微信」公式アカウントで、署名記事を発表した。周氏は、「『一帯一路』の投資と融資は、市場化を中心として、積極的に人民元の通貨としての役割を発揮すべきだ。これは現地の備蓄や国際資本を動員することに有利である」と示した。
同記事では、「資金借り手国は、資金提供国の通貨を使うことで、その通貨を発行する国の製品を直接買うことができる。こうすれば、為替コストを省くことができる。資金借り手国と資金提供国の間で密接な関係を築くことに伴い、資金提供国の通貨での収入が増えるため、将来資金提供国に対してその通貨での債務返済が可能になる」と記された。
「一帯一路」経済圏構想の主導国は中国であるため、記事中の「資金提供国」は中国を指しているものと思われる。
いっぽう、何清漣氏は周総裁の提唱について、中国の3兆ドル規模の外貨準備を目当てに集まった一部の参加国は失望するだろうとした。それらの国が、中国当局の投資プロジェクトを通じて、3兆ドルからそのわずかな一部でも手に入れれば、自国が十分潤うことができると考えているからだという。
(つづく)
(翻訳編集・張哲)
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