中国軍事学院出版社の前社長・辛子陵氏が、10月26日にボイス・オブ・アメリカから取材を受けた際、習近平陣営と江沢民集団の間の暗闘は、来る中国共産党第十九回全国代表大会(十九大)の前に全面的に解決しなければならないという認識を示した。また同氏は、その機はすでに熟したとみなしている。
政令が中南海から出られない
「江派は体制内部において20年以上も勢力を伸ばし続けてきたため、こうした勢力の一掃が一筋縄ではいかないことは明らかだが、江派の一掃なくして(習主席の考えに沿った)国政を進めることはできない。江派の高官の多くは明確な抵抗こそ行っていないものの、やるべき仕事を滞らせ中央の政策が地方や現場で実施されないという状況を作り出し、習政権に不満と抵抗を表明している。これはいわゆる「政令が中南海から出られない」状況だ。
現在、特に省部級以上の高官や党幹部は、いずれも習主席から任命された者で占められている。こうした措置は全て十九大を円滑に開催するための布石で、会場での政変や中国全土の動乱を未然に防ぐことを目的としている。9カ月で28省のトップの人事を調整したのも、こうした理由が背景にある」と同氏は述べている。
中国共産党内部に存在する「2つの司令部」
同氏はまた、中国共産党内部には「2つの司令部」が存在していると語る。習氏は、まだすべてを掌握していない。例えば、政法系統のトップの周永康が失脚したとはいえ、習氏が各級の政法権を掌握できたというわけではない。多くの官僚は相変わらず、周永康時代に制定された政策を実施している。
現在、敢えて職務を履行しないという消極的な抵抗を示す官僚もいれば、わざと問題を引き起こして不安定な雰囲気を作り出し、状況を撹乱させている官僚もいる。『我々に接待も受けさせず、賄賂も禁止するというのであれば、自分たちにも考えがある。職務を放棄して、行政全体をうまく機能しないようにしよう』と考えているからだ」
同氏は、現在、マスコミや知識人を含む多くの人々が、習近平氏について誤った認識を持っていると語っている。派手に行われた、行き過ぎたようにみえる多くの事柄は、実際には、習氏の知らぬ間に進行していたという。
「ある事柄に対し国民が不満を抱くと、国の最高権力者である習近平氏に矛先が向かい、彼の政策を非難するが、こうしたことは習氏によるものではない。(悪行の)清算に直面している江派の「トラ」たちは活路を求めて必死にあがいている。俺に甘い汁を吸わせないなら、おまえのことも引きずりおろしてやるとばかり 、不当な手段を用いて事実を歪曲し、習政権のイメージを損なわせようと躍起になっている。(国民から非難されている)事柄の多くは習氏が行ったことではないのだ。
こうした腐敗官僚を一掃し、各種の「大トラ」や最後の「長老トラ」を一網打尽にしなければ、中国の抱える問題が解決に向かうことなどあり得ない。特に、天安門事件や法輪功の名誉回復を含む政治改革については、江沢民を倒さなければ、当局は身動きを取ることすらできない」
しかし機は熟した!
だが機は熟した。同氏は「天の時、地の利、人の和(全体の情勢、力の優劣、人心)」がすべて整ったため、先行きについて不安視はしていないという。
習氏が党機関のすべてを掌握し、真の最高指導者としての地位を固めることができたなら、天安門事件や法輪功問題を解決できる可能性はあるだろうかという質問に対し、同氏は「可能性がある、ではなく、必ず解決できる、だ」と明確に回答した。
「法輪功学習者は実名で最高法院や最高検察院に対し、江沢民を告訴するようになり、当局は現在(こうした訴えを)受理している。つまりこれは、法輪功問題はいずれ解決しなければならないと当局が認識していることを意味している。天安門事件もまた解決する必要がある。習氏はこういう問題の意味を熟知しているから、こうした問題から目をそらしたままではいないはずだ」
軍の統率権はほぼ掌握
軍の統率権問題についてはこのように分析している。「胡錦涛政権の時、江沢民の庇護の下で軍委副主席の郭伯雄と徐才厚の2人が、軍委主席の胡錦涛を10年もお飾りに仕立てていたため、軍関係の実権はこの2人に掌握されていた。習主席は軍の実権を奪回するため、軍において大手術を行った。現在、習主席は軍の統率権をほぼ掌握したと言える」
同氏は、習主席は軍の統率権を取り戻したが、習派と江派の闘争は継続し、深刻さを増していると分析している。軍部では最近、徐才厚と郭伯雄の影響勢力をさらに排除し続けている。この2人が任命した幹部らの多くはまだその地位についたままだが、大局はすでに固まっている。
(翻訳編集・島津彰浩)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。