フランス紙「フィガロ」駐北京記者のパトリック・サン・ポール(Patrick Saint-Paul)さんは、悪環境の中での生活を強いられている中国農民工の悲しい実態を紹介した著書を5月に出版した。サン・ポールさんによると、北京市内のマンションの地下に約100万人以上の農民工が生活しているという。
著書のタイトルは『地下禁止区域に居住する中国のねずみ族』(Le peuple des rats Dans les sous-sols interdits de la Chine)。サン・ポールさんは2年間の実態調査を行って執筆したこの本の中で、中国経済の成長と発展に大きく貢献しているにも変わらず、農民工がまるでねずみのような生活を送るという不公平な待遇を明らかにした。
マンションの地下で生活する農民工たち
サン・ポールさんはフランス国際ニュースチャンネル「フランス24」からの取材の際、北京駐在中に多くの農民工がマンションなどの地下で生活していると、他メディアの報道記事を読み、「もしや、自分が住んでいるマンションの地下にもいるのではないか」と思い付いたのが、調査と本の執筆のきっかけだったと述べた。
「自身が住んでいるマンションの地下1階と地下2階の駐車場を行くと、100人以上の農民工がそこで生活していることが分かった。彼達は、例えば30人が一つの大きな部屋を共有するように、共同生活をしている。その環境は非常に悪い。窓も水道もなく、冬に使う暖房器具もない。照明すらなかった」と話した。
「同じマンションに住む他のフラン人と外国人に聞いてみたら、皆地下駐車場に人が住んでいるとは全く知らなかった」という。
「農民工をどのように説得し、取材を受けさせることに成功したのか。これは農民工にとって(海外メディアの取材を受けたとの事実を中国政府に知られることは)非常に危険なことだ」との質問に対して、サン・ポールさんは「マンションのあちこちに監視カメラが設置してあったため、外国人の私と農民工とのやり取りをマンション管理員にみられると、すぐに追い出される可能性がある。なので、農民工がいる部屋のドアを叩き、相手がドアを開けた後の数秒間が大事だ。その数秒の間に私を部屋に入れるようにと説得しなければならない」と思い出しながら答えた。
サン・ポールさんによると、1人の農民工と仲良くなってから、中国農民工の現状を紹介する本を書く予定だと相手に明かしたら、相手の農民工から支持され、信頼できる知り合いの農民工を紹介してくれた。農民工の友人と触れ合ううちに信頼し合うようになったという。
心が痛くなる留守児童の現状
実態調査でサン・ポールさんは一部の農民工の故郷を訪ね、そこで深刻な「留守児童」問題を直接確かめることができた。著書の中で、「中国の6100万人の留守児童の多くは、両親が長年都市部に働きに出ており、(親の愛情に触れないため)暴力や自殺などの社会問題に巻き込まれている」ことを示した。
農民工の子供は戸籍の関係で、都市部の学校に行けないため、ほとんど農村部に留まる。一年に1回か2回かしか親と会えない。子供の一部は少し年上の姉や兄と互いに面倒を見ながら生活している。また一部は祖父母と生活している。
著書の中で、サン・ポールさんは次のような悲しい事件を紹介した。両親が仕事のために何年も故郷に帰っていない一人の男の子がいる。彼は、成績通知書説明や、学校が行う保護者連絡会に親が出席しなかった唯一の生徒だ。ある日、成績通知書を受け取った彼は祖父母の家に帰ると、トイレで首つり自殺を図って亡くなった。しかし、家族はその原因に全く見当がつかなかったという。
サン・ポールさんによると、中国には4億人の農民工がいる。この男の子のような悲劇は数多く起きている。しかし、中国共産党の体制下で、このような事件に関心を示し、統計を取ろうと誰もがしないのが現実だと、サン・ポールさんは言う。
(翻訳編集・張哲)
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