中国国営メディアは4月5日、中国軍事検察院が、贈賄の疑いで取り調べていた中央軍事委員会前副主席、郭伯雄容疑者を起訴したことを報じた。軍事検察院の調べによると、郭容疑者は職権を利用して他人を不当に昇進させるなど数々の便宜を図り、その見返りとして自らまたは家族を通じて巨額な賄賂を受け取っていたことが明らかとなった。同容疑者は容疑を全面的に認めている。
郭伯雄案件は、今世紀最大の「特殊案件」と位置付けられた
香港誌「動向」4月号によると、「軍中最大級の大トラ」と言われている郭伯雄の失脚に関する一連の処理「郭伯雄案件」は中国当局の上層部の間では今世紀最大の4大「特殊案件」の1つとして位置付けられている。他の3つは、徐才厚案件、令計画案件、周永康案件のことを指しており、郭伯雄案件は最も深刻なものとされている。
「特殊案件」とは、首謀者の政治的立場が非常に高いことで、社会に広く影響を与えることはもちろんのこと、国体にも深刻かつ致命的な打撃を与えうる重大な案件を指す。
同誌はまた、2002年中国共産党第16回全国代表大会(十六大)の中央軍委会議において、江沢民が軍委主席の職務を分担することを提案し、郭伯雄を党中央軍事委員会副主席として抜擢するとともに、徐才厚を政治担当とするよう働きかけたことを挙げ、その目的は軍委副主席胡錦濤を骨抜きにすることだったと指摘している。
さらに、胡錦濤に秘密裏に招集した中央軍委会議の一件も含む郭の罪状についても詳細に報じられている。この会議では、2009年5月から劉源、張陽、張又侠らを失脚させるための組織的な計画が立てられたほか、2011年には劉源暗殺計画が立てられていたという。他にも、郭の家族が31億1000万元(約512億3200万円)あまりを125の銀行口座に分けて所有していることや、各地に住宅42件を所有していることも明らかにされているが、実際当局の都合で公表されていない余罪もあるという。
5日に郭容疑者の身柄が検察側に引き渡されたことが報じられてから、軍当局は同容疑者をネット上で痛烈に批判した。徐才厚に対しても同様の批判が繰り返された。
この中では郭と徐が職権を乱用し、重要な案件の多くを自分勝手に決定したり、行政手続きを無視し直接個別案件の処理を干渉したりしたことが挙げられ、その他、コネによる採用や賄賂による昇進、軍組織を私物化し軍階級を売買したことなど、この2人がいかに汚職に手を染め巨額な不正私財を蓄えていたかを、極めて激しい文体で批判している。
郭伯雄の昇進抜擢を推薦した江沢民の責任は逃れられない
香港メディアは、郭容疑者の昇進抜擢を推薦した江沢民の責任追及についても言及している。毎年末に行われる幹部評価リストの確認署名を行った江沢民は、軍部に発生した一連の極めて深刻な問題について、責任を逃れることはできないとしている。
5日に新華社通信が郭の身柄が移されたことを報じたわずか数分後、中国メディアの財新伝媒は新華社通信の報道を転載し、さらに昨年7月に郭容疑者が党籍をはく奪されてから発表された「郭伯雄沈浮(郭伯雄の栄枯盛衰)」という一文を抜粋して掲載したが、そこでも江沢民が名指されている。
また昨年9月、軍事関連の月刊誌『環球新聞時訊』に「党政軍扎堆 源頭難辞其咎(党政軍内に派閥が濶歩 扶植の根源が責任逃れぬ)」という記事が掲載された。そこには「政治的な良識のある全てのものにとっては自明のことだが、中国共産党の新リーダーが巻き起こした反腐敗運動という嵐は、かつての四人組逮捕(訳注)と同じ意味を持っている」と記されている。党の歴史に詳しければ、「新四人組」とは周永康、令計画、徐才厚、蘇栄を指しており、彼らの背後には共通の「ボス」江沢民が存在していることは常識だとしている。
既に他界した共産党元幹部、葉剣英の養女である戴晴氏は、米国営放送ボイス・オブ・アメリカの取材に対し、徐才厚らは軍内部でやりたい放題だったが、そうさせた責任はほぼ江沢民1人にあると語っている。
(訳注)四人組とは、中国の文化大革命期に、毛澤東の力をバックにして、反対派を徹底的に弾圧し迫害するような極端な政策を実行した江青(毛沢東夫人)、張春橋、姚文元、王洪文の四人の権力集団のことである。
(翻訳編集・桜井信一/単馨)
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