世界中の政治家、経済人、スポーツ選手などの資産管理情報が記された膨大な内部資料が、今月はじめに一斉に報道され、スキャンダルとなった。「パナマ文書」と呼ばれるこの資料のなかには、中国共産党高官の親戚9人の名も連ねた。専門家は、「高官の隠し財産はまだ明るみになっていない」と指摘する。
パナマ文書とは、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、資産移転のためのペーパーカンパニー設立を多く手がけたパナマの法律事務所モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)内部文書1150万点を、南ドイツ新聞を通じて入手。データ量2.6テラバイトという巨大な記録を1年かけて調査し、4月3日にその1部を公開したもの。
文書で指摘された著名人らは、脱税やマネー・ロンダリング(資金洗浄)の疑いが持たれている。キャメロン英首相の父親やロシアのプーチン大統領の側近など72人の首脳級政治家および親族の名が記され、中国共産党高官9人の親戚もふくまれる。
その9人とは、現職の張高麗・中国共産党政治局常務委員(序列7位)の娘の夫、李聖波氏。同じく現職の劉雲山・常務委員(序列5位)の息子の妻、賈麗青氏。賈慶林・前政協主席の孫、李紫丹氏。曾慶紅元常務委員の弟、曾慶淮氏。薄煕来・元政治局委員の妻、薄谷来。李鵬・元総理の娘の李小琳氏。毛沢東・元主席の孫の夫、陳東昇。胡耀邦・共産党前総書記の息子、胡徳華氏。そして習近平主席の姉の夫、鄧家貴氏。9人のうち5人が江沢民派の人物。
パナマ文書によると、習近平主席の義兄・鄧家貴氏は2009年、英ケイマン諸島に2社のオフショア会社を設立した。しかし、シンガポール紙・聯合早報によると、習氏が2012年に国家主席に就任する前に撤退していたという。
明るみに出ない中国「隠し財産」
英ガーディアン紙によると、モサック・フォンセカ法律事務所は、世界に置く支部は中国が8カ所と最多。また、同社の業務の3分の1近くが香港と中国の顧客向けだったという。
中国専門家は、まだ明るみになっていない共産党高官の隠し財産の存在を指摘する。米国パデュー大学の謝田教授は「資産を隠す租税回避地(タックスヘイブン)は香港、スイス、パナマなどカリブ海の国にある。今回の報道は、ただひとつの事務所が手掛ける取引のみ。共産党高官はもっと多くの法律事務所とかかわり、あらゆる銀行に資産を隠しているだろう」と分析した。また謝教授は、中国でもっとも汚職を推進させたとされる江沢民一族の名前がないことにも疑問符を打った。
時事評論家の文昭氏は、ラジオ局・希望の声の取材に「中国の権力ある大物政治家は、同じく経済界にも幅を利かせている人物。知られたくないグレーな収入がある。海外へ資金を移したのち、架空の取引書や記録をつくり、裏付けとする。このような出所不明の財産問題がもっと表出すれば、彼らは刑事責任を問われるだろう」と述べた。
中国の利用者、マネー・ロンダリングが目的
タックスヘイブンを使うことは、合法とされる。文氏は、中国汚職高官と欧米の著名人のタックスヘイブンの利用法の違いについて「欧米の利用者は税金逃れが主な目的だが、中国の利用者の多くは、不当な収入をマネーロンダリングするのが目的」と推測した。
台湾の中時電子報(ChinaTimes)は6日、中国当局は資本の海外流出を厳しくコントロールし、個人の外貨貯蓄を制限していると報道。中国中央銀行の反マネー・ロンダリング監視測定分析センター2011年の報告書によると、汚職による資金移転の額は12兆円以上に達しているという。
(翻訳編集・佐渡道代)
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