「ビッグブラザー」よりひどい、中国6つの監視システム

2016/03/16
更新: 2016/03/16

英作家ジョージ・オーウェルは、独裁者による監視社会を描く小説「1984」を出版した。家族や隣人を告発し、「テレビスクリーン」を通じて思想を統制する。自由のない灰色の世界は、読者をぞっとさせた。半世紀以上たった今、オーウェルが考えた仮想の国よりも強力な監視システムが、共産党独裁の中国では敷かれている。6つの代表的なスパイ・システムを挙げる。

 1、「大情報(ビッグ・インテリジェンス)」

中国共産党はそれぞれの地方当局が管理する監視システム「大情報(ビッグ・インテリジェンス)」で、全国民を見張っている。これは2014年に存在が明かされたが、すでに10年は運用していたとされる。

ラジオ局「希望の声」の取材に答えた重慶市公安局の前局長によると、「大情報」なら、当局が、13億人の全国民のデータを確認するのに12分、注意人物リスト内なら4分、すべての運転免許証なら3.5分で確認できるという。

「大情報」は、オーウェルの想像した「テレビスクリーン」をしのぐ監視機能をもつ。ある人物を探すならば、街を走るタクシーからレストラン内にいたるまで、監視カメラで見つける。

北京には、2010年の時点で40万台の監視カメラが設置されている。北京警察は2015年10月、4300人のモニター監視係を設けた発表した。

 2、社会信用システム

独裁者は、体制を揺るがしかねない人物を「思想犯罪」者と決めつけて取り締まると、オーウェルは考えた。同じ手法を中国共産党はとっている。党のルールに歯向かうようならば、企業や個人に「意思」「発言」を禁じる。

中国政府は2014年6月、金融業向け信用情報システム整備のため、「社会信用」システムを導入すると発表した。国民の資産情報や職歴、インターネットでの動きや発言、購入履歴など、当局があらゆる個人情報を収集し、これらを合わせて支払い能力などをふくむ「信用度スコア」を算出する。

政府は、このシステムにより、中国では意識の低い商業取引における信用度をあげて「政府と司法の信頼と誠実さを強化する」とうたっているが、個人情報の検閲の口実になりかねない。

 3、インターネット警察

独立組織フリーダム・ハウスの調査によると、世界65カ国のインターネットの自由に関する評価で、中国は、キューバやシリアを抑えて「最悪」に位置づけられた。

調査報告書は、中国政府がネット世論をひどく検閲していると指摘する。共産党の宣伝をしたり、政府批判の発言を通報したりする50万人ものアルバイト、通称「五毛党(1作業あたり1元の半分=5毛を稼ぐことから)」の存在も記した。

今年3月、習近平指導部が全国人民代表大会(全人代=国会)で提出した「第13次5カ年計画」では、ネット世論の管理強化が記された。今後も、言論や思想の統制が厳しくなることが予想されている。

 

 4、自動車の追跡

捕らえたい人物が車に飛び乗ってしまうと、追いかけるのは難しくなる。そこで最近、当局は、タクシーの監視カメラにくわえて、個人用をふくむ全車両に追跡IDを取り付けるよう要求している。深センでは、すでに20万の追跡IDを運送トラックとスクールバスに設置されている。ロイター通信によると、当局は全土でこの自動車追跡IDを取り入れる予定だという。

中国共産党は過去にも、似たスパイ・システムを取り入れている。2011年、香港の報道によると、香港の車両全てのナンバープレートの裏にはスパイ機能が取り付けられていて、会話を傍受したり、車両を追跡したりすることができるという。

 5、電話のスパイ

世界的にも、政府が電話を傍聴することは通例化している。日本の刑事法にも「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」がある。しかし、中国共産党はさらに、工場生産の段階でスパイ機能を搭載させたり、サイバー攻撃で強制的に悪意あるプログラムをインストールさせたりしている。

米国のセキュリティ会社VolexityのCEOスティーブン・アデア氏は大紀元の取材に応じ、2014年10月、香港で大規模な反政府デモが行われた間、参加者の携帯電話やパソコンに、組織的なハッカー攻撃があり、情報を盗む不正プログラムの感染があったと回答した。

また、携帯のセキュリティ対策大手ラクーン・モバイル・セキュリティのCEO・マイケル・シャウロフ氏によると、この悪意あるプログラムは、スマートフォンのカメラ映像、マイク、履歴とGPSが示す位置など、あらゆる情報にアクセスできるもので「諜報目的ならば、おそらく完璧なツールだ」と指摘した。

何年も前から、中国企業は、情報端末にウィルスやスパイ機能をあらかじめ搭載して販売している。収集した情報は、当局へ送られている。

 6、未然の犯罪

たとえ「思想犯罪」の追求からまぬがれることができたとしても、中国共産党は「未然の犯罪」で、あなたを逮捕するかもしれない。

ブルームバーグによると、中国共産党は中国IT最大手の中国電子科技集団に、個人の仕事、趣味、購買習慣、行動に関する情報をあつめる新しいソフトを構築するよう命じた。

同社の技術は昨年12月の会見で「私たちはそれを『ビッグデータのプラットフォーム』とは言わない。『情報環境ユニット』と呼んでいる。テロ行為の発生原因を調べることは重要だが、その活動を予測することがより重要だ」と述べた。

このような「未然の犯罪」発見システムは、テロ攻撃を防ぐために米国が生み出した。しかし、「自由を擁護する団体や企業の反発や、プライバシー保護法の司法整備などもない条件では、前例がない」とブルームバーグは付け加えた。

中国共産党はテロ防止策として、この監視システムを導入する。しかし、中国はこれまで「テロ対策」と名付けて、情報検閲や人権侵害を合法化させてきた。2014年11月に打ち出した反テロ法は、「テロ」の非常に広く漠然とした定義に、国際的な非難が集中した。新唐人テレビに答えた法律専門家・趙遠明氏は「反テロと、異見者や民族問題の境界線をぼやけさせる」と批判した。

(文・ジョシュア=フィリップ/翻訳編集・佐渡道代)