【大紀元日本3月30日】中国提唱のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に駆け込みで参加する国が相次いだ。今月に入ってからイギリスをはじめ、ヨーロッパの先進各国が参加の意向を表明したほか、先週、韓国やロシア、ブラジルなどが、さらに29日はオーストラリアも新たに参加の意向を表明した。40カ国超の参加が確実視され、勢いがついてきているように見える。ただ、問題も山積みだ。経済学者の何清漣氏は米VOAの寄稿記事で、運営手法や投資理念の違いで問題を抱えていると指摘した。
中国は「AIIBでの拒否権を持たない」ことを欧州諸国と約束したため、イギリスなど多くの先進国が参加を表明した。しかし、運営面の不安は残ると何氏は指摘する。まず、15~20席ある取締役会の枠の中、域外国にはわずか3席を与えているだけだ。現在、欧州7カ国が参加を表明している。どの国を選ぶのか、中国は頭を悩ますことになる。各国の機嫌を損なうまいと「取締役会の枠を拡大する可能性がある」と何氏は推測する。
さらに、「AIIBの運営では、いかなる国も単独での決定権を持たない」と中国は自らの拒否権も持たない考えを示した。公平な運営をアピールしているが、「物事が決められない」と何氏は懸念する。
共産党機関紙・人民日報はAIIBの強みについて、世界銀行などは融資を受ける国に市場の開放や人権問題の改善を要求しているのに対し、AIIBにはこういう縛りがないと強調した。
これについて、何氏は 「中国の従来のやり方と一致している」と述べた。これまでも中国は人権状況の悪いアフリカ諸国に無償援助や低金利融資を行うことによって、国連人権委員会で中国の非難提案を毎回頓挫させた。「中国はそもそも、対外経済援助と投資との境界線を曖昧にしていた」と指摘し、経済利益よりも政治成果を重んじる姿勢に問題があると述べた。政治的な成果を得るために、途上国の債権を放棄するのも中国の常套手段だ。
中国は当初、中国、中央アジア、欧州を結ぶ新たな貿易・輸送ルートの確立を目指す「シルクロード経済圏」をAIIBとリンクさせ、インフラの整備を通じて同地域での主導権を握ることを考えていた。また、中国企業に整備プロジェクトを受注させ、低迷が続く国内経済の底上げにつなげる、という打算もあった。しかし、シルクロード経済圏に有る多くの国の国家信用格付けが低く、投資した資金の回収が問題になる可能性が高い。
何氏は欧州諸国が融資を受ける国の人権問題を不問にしても、利益を度外視することはしない。「援助で投資を促進し、政治的な繋がりを強化する」中国のやり方を受け入れられないだろうとの考えを示した。AIIBを思うままに操るのは中国にとって難しい問題となりそうだと結論付けた。
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