【大紀元日本3月27日】李克強首相は今年の全人代で、「中国の経済状況が新常態(ニューノーマル)に入った」と宣言した。経済成長率目標を7%前後に引き下げるなど、これまでの高度成長に終わりを告げた。中国政府は、低迷を続ける経済状況を新常態と名付け、前向きに捉えている。しかし、専門家の見方は楽観的ではない。『やがて中国の崩壊が始まる』(邦訳・草思社)の著者ゴードン・チャン氏は中国の財政赤字の悪化で、「中国版債務危機の襲来」と危機感をあらわにしている。米VOAが報じた。
中国財政部がこのほど発表した2015年1~2月の全国財政収支状況によると、財政収入は、前年同期比3.2%増の2兆5717億元(約49.35兆円)となった。前年同期の8.6%を大きく下回り、23年ぶりの低水準だ。一部の政府系ファンドの資金が新たに計上されていることを考慮すれば、実質成長率は1.7%にとどまっている。一方、財政支出は前年同期比10.5%増の1兆8900億元(約19.2兆円)となった。前年同期は8.2%増だったことから、支出は拡大している。
楼継偉財政相は全人代で、今年の財政赤字が国内総生産(GDP)の2.7%に当たる1兆6200億元(約31兆円)に達する見込みだと述べ、世界的な金融危機以来の最大規模となる。
チャン氏は、財政赤字の対GDP比が警戒ラインの3%より下回っているが、二つの不安要素があると指摘した。一つは、GDP成長率は政府が掲げた7%に達成できるかは疑問視されている。国際通貨基金(IMF)は今年の成長率を6.8%と予測している。もう一つは、中国は予算通りに支出するかどうかも懸念されている。李首相も楼財政相も、経済の減速が続くなら、政府が支出を増加させ景気を刺激する考えを示しているためだ。
チャン氏は、政府の支出を増加させる以外、中国政府はより効果的な景気刺激策を持っていないと指摘する。ただ、支出を増加させれば、すでに対GDP比282%に達した債務をさらに膨れ上がらせ、経済リスクが高まる恐れがある。2007年以来、中国の債務残高は3倍に膨らみ、対GDP比は米、豪、独、カナダなど先進国よりも高い。
中国の財務残高の半分近くは不動産関連のものだという。不動産市場の低迷で不動産企業の債務不履行が多発し、商業銀行の不良債権比率は2014年12月時点で1.29%に達し、過去4年の最高水準となった。不動産開発企業の佳兆業集団は今年1月、融資の4億香港ドル(約61.5億円)の返済ができず、中国の不動産会社がドル建て債でデフォルト(債務不履行)に陥る初のケースとなった。
不動産市場の低迷は地方財政を直撃している。中国政府の発表によると、今年1、2月の不動産関連の税収は減少し、不動産取得税が前年に比べ12.5%、土地増値税(土地付加価値税)が8.7%、耕地占用税が20%近くそれぞれ減った。すでに発表された2015年の地方政府の予算案では、北京と上海だけが収支のバランスをほぼ保っているが、多数の地方政府は赤字になる見通し。広西省、黒竜江省、新疆ウイグル自治区の場合、収入が支出の半分にも及ばない。
中国財政省は8日、地方政府が最大1兆元(約19兆円)まで債務を低利の債券にスワップすることを認めた。経済全般の活動を阻害しないよう、地方政府が抱える多大な債務負担を軽減することを目指す。今回の措置により「地方政府の債務負担を年間およそ4億~5億元(約76億~95億円)減らす見込み」としているが、専門家らは「効果は短期的だ」と根本的な債務解消にならないとみている。
李首相は全人代で、地方政府の債務の70%は投資によるもので、将来高い利益を見込まれると発言し、債務問題をそれほど心配する必要がないとの認識を示した。
しかし、この楽観的な見方を支えるには好調な不動産市場が必要だ。実際、不動産市場のほか、鉄鋼業やセメント産業などの生産能力は過剰で、いずれも業績は不調だ。政府が投資した大型インフラプロジェクトは利益を得るまで長い期間を要する。さらに、政府シンクタンクの国家発展改革委員会が行った研究によると、中国の“無駄な投資”は総投資額の半分に当たる6兆8000億ドル(約807兆円)に達しているという。
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