【大紀元日本5月28日】中国では最近、報道にかかわる者の自殺が相次いでいる。かつて江沢民派に支配されていた宣伝が習近平色に染められるなか、幹部を対象とした人事異動や腐敗摘発も繰り返されている。報道に対する厳しい統制を受けながらも、党内の軋轢の影響を受ける末端の幹部はプレッシャーに押しつぶされているようだ。
相次ぐ死者
最近数ヶ月間で報道に関わった6人の死が判明している。
26日、浙江省江山市の報道情報センターの周洪浪主任が同センター建物の5階から飛び降り自殺をした。
8日、深セン報業集団広告部の張敬武部長は公園内で、遺体で発見された。近くに遺書が残されていた。うつ病を患っていたと伝えられている。
6日、湖南省湘郷市ラジオ・テレビ局の賀衛星副局長は職場の階段で首を吊り自殺した。残された遺書には「苦苦苦、人生も仕事も辛い。何も達成できない、プレッシャーの強い仕事」と記されており、精神的に追い詰められていた事がうかがえる。
4日、杭州日報傘下の有力紙「都市快報」の徐行副編集長が自殺。家族によると、仕事のプレッシャーで寝ることもできなかったという。
4月下旬、新華社の安徽支社・宋斌副社長兼総編集長が職場で首吊り自殺をしているのを発見された。
3月には、国務院(政府)新聞弁公室の李伍峰副主任がビルからの飛び降り自殺を果たした。香港メディア・大公報によると、李氏はうつ病に悩まされていたという。
相次ぐ宣伝に関わる者の死について、インターネットでその要因を探る議論が起こった。「彼らは恐らく、不正に直面しても何も出来ずに追い詰められた」「社会と人生に失望し、去ることを選んだ」と死者は中国の宣伝統制の犠牲になっていることを指摘した。
米国の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えた、ハドソン研究所の韓連潮氏は「共産党は中国メディアの100%を制御する。しかしながら今日の自由主義経済化を取る中国では、読者へ客観的なニュースを配信することが求められている。この2つの狭間に置かれるスタッフたちは相当なプレッシャーを受けている」と指摘する。また一部の自殺は、腐敗摘発とも関連する可能性があるとする見方を示した。
宣伝部門の人事異動
中国共産党中央宣伝部は党のプロパガンダを国内外に発信する「党の舌」の役割を果たす。同部およびその支部は中国の新聞、テレビ、ウェブサイト、雑誌、出版物、ラジオなどあらゆるメディアの報道を指示、検閲し、規制する。この宣伝部はこれまで、共産党の支持を高める上で重要な役割を担ってきた。中国政治学教授アン=マリー・ブレーディ氏は著書の中で「プロパガンダを支配するものが政治を支配する、ということを共産党幹部たちは明確にわかっている」と指摘する。
宣伝部の主な役割は江沢民政権時代、李長春氏と劉雲山氏により形作られた。2人は胡錦濤体制においても中国共産党の宣伝と思想部門のナンバー1、2の権力を維持した。2012年11月の習近平体制の開始以後、党内全体における江沢民の権力基盤が崩れ始めた。
特に宣伝部門は最近、習近平サイドの新メンバーの登用や、江沢民サイドの幹部の解任でその傾向が際立っている。
5日、湖北日報グループの張勤耕社長兼党委委員は、「規律違反の疑い」で共産党委員会から解任された。湖北日報グループは総資産50億元(約810億円)で、11の新聞 、5つのニュースサイト、出版社などを運営する同省最大手メディア。違反の詳細については明らかにされていない。
4日、福建省メディアグループの党委書記で会長の舒展氏もまた「規律違反」により当局の調査を受けている。4月18日、中央対外宣伝弁公室の高剣雲副局長も同様に調査を受けている。
人民日報もまた揺らいでいる。4月に社長、副社長、編集長と副編集長の交代があった。社長には習近平氏に近い、前編集長の楊振武氏が就任したことが伝えられた。