レノボ、米企業の買収進む セキュリティに懸念

2014/02/05
更新: 2014/02/05

香港にあるレノボの看板(PHILIPPE LOPEZ/AFP/Getty Images)

【大紀元日本2月5日】米グーグルは1月30日、同傘下の携帯端末メーカー、モトローラ・モビリティーを中国レノボ・グループ(聯想集団)に29億1000万ドル(約3000億円)で売却すると発表した。レノボの筆頭株主は中国政府だ。モトローラの利用者たちは買収後の製品の安全性に懸念を抱いている。

世界の携帯電話事業シェアは米アップル社がトップ、次いで韓国サムスン電子、レノボはこれで第3位につく。

2013年7月、豪紙オーストラリアン・ファイナンシャル・レヴュー(AFR)は、レノボ製の製品には「無断でユーザー情報にアクセスできる工作を仕掛けられるハード・ソフトウェア上の脆弱性が認められる」などの安全性と情報セキュリティの脅威があるとして、米国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスなどは政府機関に同社のコンピューターを使用することを禁じていると報じている。レノボ製モトローラも、同様の措置を受けかねない。

最近、米国政府はスパイ活動とサイバー攻撃の脅威からの防衛策として、米国すべての国家機関は中国の情報技術システムの使用を禁止することを決定した。同策の予算は2014年連邦予算に組み込まれている。

知的所有権とセキュリティ保護に詳しい米ヒューストンのライス大学電気コンピュータ工学Farinaz Koushanfa准教授は「米国政府は中国製を使っていない、ということを知っている」と大紀元英語版の取材に答えた。

レノボは実はモトローラ買収のわずか6日前、米国のIT企業IBMからサーバー事業部門も電撃買収している。Koushanfa准教授は「今回の売却はさらなる脅威をもたらす」と警告する。

買収前、サーバーや携帯など中国で製造されていたにしろ、ICチップなど頭脳となる部分は米国で企画設計されていた。しかし、今後はすべてが中国に任されることになる。

今回の買収でレノボはモトローラから製造や販売などスマホ事業の大部分を買い取る。2000件の特許資産も含まれるとされ、グーグルからは関連技術のライセンス供与も受ける。Koushanfa准教授は、情報設計システムもすべて中国に渡ることを懸念する。

売却にあたりグーグルのエリック・シュミット会長は3日、米国内で開かれた夕食会で、米当局の承認を得られるとの自信を示している。米国では、外国企業の買収案件について米外国投資委員会(CFIUS)が審査を行い、承認を得る必要がある。同会長は自信の理由に、レノボが2005年に米IBMのパソコン事業を12億5000ドルで買収した例をあげた。

Koushanfa准教授によると、米国政府はこのIBM買収の後、米国政府はコンピューター・システムを早々に他社に切り替えたという。

レノボは中国国有企業

レノボは1984年、国の機関である中国科学院の計算機研究所11人の研究員が設立した。当時の名称は中国科学院計算所新技術発展公司で、外国ブランドの販売から出発した。

2012年3月、レノボの57.81%は公開株。8.36%はレノボの楊元慶CEO、0.25%は同社幹部が所有する。のこりの33.58%はレジェンドホールディングスという持株会社が保有している。同持株会社の筆頭株主(65%)は中国政府機関の中国科学院。中国政府は間接的にレノボの27.56%を保有しており、筆頭株主だ。

中国政府の計画

レノボによるモトローラ、IBMサーバー事業など最近の買収は、中国の指導者らが制定した「5カ年計画」と一致する。中国企業の世界的地位とシェアを高めるため、海外のハイテク企業を買収するというものだ。この行動は主に米国企業にターゲットが当てられている。

興味深いことに、中国は「米国製(Made in America)」という「宣伝方法」も採用している。例えば2013年6月、レノボは米ノース・カロライナの工場でコンピューターを製造しているが、製品には「米国製」と貼ることが出来る。情報システムは「中国製」だ。

一方、中国の大手通信設備会社中興通訊(ZTE)は米現地企業と連携し、「米国製」と謳った映像会議システムを販売しようとしたが、この「米国製」は米国政府に禁止された。

中国政府は海外での投資を増やすために、3つのアプローチを行うと発表している。1▼中国製造企業が海外投資をし、そのブランド性を確立する 2▼海外に研究開発機関を設置する 3▼最終的に、中国の望ましいハイテク経済の促進に、海外企業を取り組む

中国政府はこれらを実現するためならば海外投資を許可するとしている。専門家は「中国企業の海外企業買収計画には密接に中国政府の思惑が組み込まれている」と警告している。

(文・Joshua Philipp/翻訳編集・佐渡 道世)