【大紀元日本6月19日】中国に17年間移住し、「中国通」として知られた英国人作家マーク・キットー氏がこのほど、中国からの引き上げを決意した。「中国への愛はすでに消え、中国ドリームには幻滅した」と氏は語っている。
英国の大学で中国語を専攻した後、1986年に北京に留学した同氏は1996年から中国に移住し、後に中国人女性と結婚した。そして2人の子ども(8歳と10歳)にも恵まれ、上海市から約200キロ離れた浙江省莫干山の村に棲家を構えた。
そんなキットー氏は昨年8月、英誌プロスペクトで「あなたは永遠に中国人になれない(You’ll never be Chinese)」という文章を発表し、「私の愛はすでに消え、わが中国ドリームから醒めた」と中国を離れる考えをはじめて口にした。
同氏のこれらの発言は思わぬ波紋をよんだ。外国人投資家にマイナスの影響をもたらすと心配する浙江省当局は、彼の妻に嫌がらせを繰り返し、同氏に対しても、発言の真意を執拗に問い詰めた。
キットー氏が中国に絶望した理由の一つは、社会全体に浸透する拝金主義だという。
「周り近所は私の健康とか、私の家族のことを労うことはまずない。彼らがいつも聞いてくるのは、私は商売でどのぐらい儲かったのか、我が家の車はいくらなのか、ペットの犬はいくらで買ったのか、だ。多くの中国人の眼中には金しかなく、それは何より大事なもの。政府は国民をいかにコントロールすることしか考えていない」
それだけでない。キットー氏のビジネスの道のりも波乱万丈だった。
中国に移住してからの同氏は「That’s Shanghai(それは上海だ)」「That’s Beijing(それは北京だ)」「That’s Guangzhou(それは広州だ)」などの英文雑誌を発行し、成功を収めていた。しかし、2004年に、これらの雑誌が当局に出版禁止され、「数百万ドルに値する価値を失った」と同氏は言う。その後、一家は浙江省莫干山に隠居し、喫茶店と小さな旅館を営んで生計を立ててきた。
「それでも、商売がまただれかに奪われるのではないか、今日食べた物は安全なのか、空気は大丈夫なのか、と常に不安だらけだ」
子どもの教育問題もキットー氏の大きな悩みである。
「テスト三昧で、虚偽なイデオロギー宣伝で固められている教育環境でわが子を育てたくない」と語った同氏。子どもたちは小学校入学の初日に、解放軍を讃えるプロパガンダ映画を観賞させられ、その後も共産党精神を唱えるため、革命の英雄「雷鋒」の物語を日常的に聞かされる。「その異様な圧力の中で、子どもたちの心は間違いなく徐々に歪んでいく」
同氏は、中国の教育システムは「人間を育成しない、ただ教材の中の内容を生徒の頭に詰め込むだけ」と懸念している。「結局、2種類の人間しか育てない。負け組と勝ち組だ。勝ち組は大学で経営を勉強し、負け組は田舎に帰って農民になるか、工場の労働者になる」
『チャイナカッコウ』などの著書で自身のチャイナドリームを描いていたかつての中国ファンのキットー氏の気持ちは冷め切った。
「私にとって、もはや中国は長期的に事業を展開する地でも、定住に適する地でもなくなった」「中国の社会は激変を遂げている。共産党政権に残された時間はもう長くない、不動産バブルの崩壊と同時に、この国は突然に崩れるでしょう」と同氏は中国に対する複雑な感情を語った。
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