【大紀元日本6月15日】あらゆる分野でニセモノが氾濫している中国。最近では、医療設備もなく救急隊員もいないが、通報すれば駆けつける「ニセ救急車」の存在が明らかになっている。北京晨報が、被害者の経験と腐敗した救急搬送システムの実態を伝えた。
温州市に住む林さんの夫は重病を患い、同市某病院の集中治療室(ICU)に40数日間入院。その後、約400キロも離れた杭州市の病院に移ることになった。
当日、予約していた救急車に乗り込み、出発しようとした。林さんの説明によると、救急車に備え付けられていた人工呼吸器を付けた直後、夫は呼吸困難になり、数分後に吐血。そのため再び同じ病院のICUに運び込まれた。翌日まで、瀕死の状態が続いた。
この病院の医師がその「救急車」内部を確認したところ、人工呼吸器が故障していた。「同乗の『救急隊員』は、機器の操作方法すらよく知らない様子だった」と林は言う。
林さんは確かに救急車の出動を受けつける市の機構・救急センターの専用電話「120番」に連絡していた。この「救急車」の対応を不審に思った家族は、警察に通報した。
「救急車」の所有者は同市の私立病院「温州華僑骨傷医院」と登録されている。呂愛蓮副院長は北京晨報の取材に対して、「政府の許可を得た救急車」と主張しながらも、「通常は命の危険がない外傷患者しか搬送しない」と曖昧な説明を繰り返した。
「なぜ、今回のような重病患者を杭州市の病院まで長距離搬送しようとしたか」との記者の質問に対して、同副院長は笑いながら「状況をまったく知らなかった」「救急車の管理が足りなかった」などと他人事のように答えた。その責任について問い詰めると、副院長は黙り込んだ。
同紙が取材を進めていくうち、驚くべき事実が明らかになった。この「救急車」は個人の所有物であり、車のオーナーと運転手の話では、市の緊急の受付担当者がしばしば搬送の依頼を寄せ、搬送料金(注:中国の救急車出動費は全額患者が負担し、値段はタクシーより遥かに高い)の20%を、『業務斡旋の謝礼』として受付担当者に渡しているのだという。
記者は同市救急センターに話を聞くと、ある幹部が「当時の受付担当者が不在のため、詳しい状況を把握できていない」と答えるに留まった。
今回の事件について、同市当局は上記の私立病院に処分を下したという。林さんの件の責任については「診断ののち結論を出す」としている。