【大紀元日本5月29日】英国人女性と結婚した農家の中国人男性の家が、強制土地収用の危機に晒されている。外国籍という権利を駆使して、妻は必死に嫁ぎ先一家の土地を守ろうとしている。山東省の小さな村で実際に起きた、家族の悲劇と夫婦愛の物語を、中国のポータルサイト騰訊が伝えた。
2011年のある日、許帥さんの父親は地元の共産党委員から「土地を買い取りたい」との電話を受けた。1ムー(15分の1ヘクタール)当たり700元だという。
父親は、一家が代々大事にしてきた肥沃な土地だ、と価格交渉を望んだ。農業を営む家族は1ムー当たり1500~3000元の利益を毎年得ていた。相応の値段でなければ応じることが出来ない。しかし要求は一方的に拒まれた。党委員はこう告げた。「収用は3日後に始まる。もし移動を拒んだら逮捕する」
委員会の決定には抵抗しきれない。父親は諦め、土地を手放そうと息子に話した。息子は反対した。市当局、公安局、土地管理局に電話をかけたが、相手に一律に、「『逮捕する』と言ったことに証拠があるのか? 収用すると言ったけど、実際、収用したのか?」と聞かれた。「証拠はない。収用は3日後」と返事をすると、「その時にまた電話してほしい」と返された。
許帥さんはインターネット掲示板に事の顛末を書き込んだ。当局の冷たい反応とは裏腹に、たちまち注目を浴び、多くの同情と支持の声があがった。
許帥さんは英国に帰省していた妻に電話してこう告げていた。「ずっとロンドンで暮らすんだ。中国に戻らなくていい。子供を育て、いずれ良い人と出会って再婚してほしい。俺はもう生きていてもしようがない。土地収用に来たら、俺は命を懸けて闘ってやる…」
夫婦は当時、出産に必要な「出産許可証」を持っておらず、将来、子供が中国人の戸籍を持てない恐れがあったため、妻のジョアンナ・マーガレット・ノーブルさんは母国である英国で長女を出産した。
国際結婚した夫婦と、土地を守ることに命を懸けている許帥さんの覚悟は欧州メディアからも注目を集め、中国の小さな村の家族に複数の海外メディアの取材クルーが入った。
騒ぎを受けて市当局は許帥さんの元を訪れた。「混乱を起こすのはやめてほしい、土地収用は延期しよう」となだめに来た。
「突然、光が差したかのようだ。この社会は真っ暗じゃない、望みがあると思えた」 許帥さんは問題を冷静に見つめなおした。「村に道路を敷く土地開発業者が悪いわけじゃない。発展は良いことだ。村の経済を変え、仕事を生み出す」「俺は古い人間じゃない。歴史にこだわる頑固な男じゃない」
許帥さんは父親に収用を許可するよう言った。土地収用は違法だとしても(村にとって)デメリットよりメリットの方が大きいと、当局の要求を受け入れ、父親はサインした。
一年が経過した。妻のジョアンナさんも子供を連れて中国に戻ってきた。許帥さんの祖父は、新たな家を元の場所に建てたいと希望した。家族は村当局に再建築の申し込みをし、200元の手数料を支払った。村側は「土地はそもそもあなた達のものだったから、家を建ててもいい」と答えた。
ことは順調に進んでいるはずだった。悲劇は突然訪れた。新家屋の建設過程が約半分まで進んだ所で、ならず者の集団が突然現れ、祖父を張り倒し、造りかけの家を祖父の目の前で壊し始めた。「この土地はすでに別の所有者がいる」と言い捨てた。
新しい所有者はある母子だった。現場で許帥一家と喧嘩になった。ジョアンナさんは当時、2人目の子供を妊娠していた。この母子は、妻を侮辱する言葉を口にした。許帥さんの頭に血が上った。「英国から何千キロも離れた山東省の村に嫁ぐことが簡単だと思うか。食べ物も着る服も合わない。村での侮辱に耐えて俺に助けを求めている。俺が何もしないとでも思うか」
もみ合いが始まった。しばらくして警察が到着し、相手方は素早く去っていった。
祖父はこの時のケガで持病が悪化し、2カ月後に他界した。死の間際、祖父は許帥さんに200元を渡し、会えなかった曾孫に「何か良い物を買ってやって」と言い残したという。その5日後、許帥さんに2人目の子供が生まれた。
(つづく)
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