(Mark RALSTON/AFP)
【大紀元日本3月21日】世界最大の人口を抱え、国内総生産(GDP)は世界2位という大国、中国の国家イメージが悪化している。19日付のNYタイムズ紙が「中国に愛想を尽かした」と題する評論でこう指摘した。
記事は米シンクタンク・ピュー研究所や英BBC放送の世論調査を引用し、中国の国家イメージは「ひどい」と「複雑」の間に位置していることを指摘。「世界の中国に対する世論は、この十年間ではヨーロッパがもっとも否定的だったが、今ではアメリカとアジアも同様である」とイメージの悪化は世界で拡大しているとの見解を示した。
習近平主席が初外遊先に選んだロシアとの間でさえも緊張の兆しがあると記事は指摘。両国はイデオロギーや利益の一致はあるものの、歴史のしがらみや貿易摩擦、武器取引に起因する問題、長引く移民論争、中央アジアにおける戦略的競争など、どれも両国の関係にダメージを与えている。
一方、中東やアラブ連盟にとっては、中国のシリア、イラン政権への支持や国内イスラム教徒への迫害は許され難い事態であり、特にイスラム教徒への迫害は中央アジアの反感も買っている。
アフリカでも、中国の強欲が非難されている。過去3年間、中国の企業が「洪水のごとく」アフリカに進出し、石油やその他の原材料を略奪した。援助プロジェクトとの名の下でのインフラ建設も被援助国よりも中国の建設会社が利益を得ている。さらに、この地域で歓迎されない政府への支持もアフリカでの中国のイメージを悪化させた。同じ事はラテンアメリカでも起きているという。
米中関係について、同記事は「相互依存と、時折の協力と、競争の激化と、不信の深化の組み合わせ」であると指摘。両国にとって重要な課題は、「本格的な敵対関係にならないよう、激化する競争と不信感を注意深く管理すること」だという。
イメージ悪化の根底に「独裁的な政治体制」
中国のイメージダウンは世界的なものであるが、その理由は地域によって異なると記事は分析する。
中国の巨大な貿易黒字は、世界中の雇用喪失に直接的、間接的につながっているが、その影響は特に、ヨーロッパやラテンアメリカ、アメリカで顕著である。これらの地域では、中国は「未曾有の経済的脅威」として立ちはだかっているという。
アジア諸国の中では、中国の軍事力近代化と軍事力の誇示が警戒を呼んでいる。一方、明るみになりつつあるサイバー攻撃の実態はターゲット国の米国を驚かせ、中国国内の人権状況もまた、長年、西側に懸念されている。
これらのイメージ悪化の根底には「中国の独裁的な政治体制」と「不透明で腐敗だらけの商業行為」があると記事は切り込んだ。
イメージの悪化は中国企業の世界進出に響いている。世界ブランド価値トップ100に中国企業は1つもランクインしていないことがそのことを物語っている。悪いイメージはさらに、習近平政権の外交を難しくしている。「外国の批判を反射的に押しのけ、または説得力のない広報活動よりも、批判に耳を傾けたほうが大事だ」と記事は習政権に助言した。
具体的には、サイバー攻撃の即時停止や、市場の開放、対外投資や輸出への補助金の制限など、貿易黒字を減らす努力を講じるべきだと提言。知的財産権や人権の保護もイメージ改善につながる手立てだとし、外交においては、南シナ海での紛争は多国間交渉に参加し、日本とは和解の交渉を行い、北朝鮮やイランには核実験を停止させるよう圧力をかけ、さらに対外援助や軍事予算を透明化させるなどと提案した。「これらの取り組みは、数十億ドルも掛けたプロパガンダ活動より、余ほど国家のイメージアップに貢献する」と記事は結んだ。