全人代閉幕式で演説する習近平国家主席、3月17日 (Photo/Feng Li/Getty Images)
【大紀元日本3月19日】全国人民代表大会(全人代、国会に当たる)で国家主席に就任した習近平氏は17日、同大会閉幕式演説で、「中国の夢」を再度強調した。未来中国の方向性とも読み取れるこの論調について、専門家や外国メディアが解析した。
昨年11月に党と軍のトップに就任した習氏はついに、党、国家、軍の最高権力を一手に集めた。これまでの公での談話において、同氏は「中国を復興させる」との言葉を繰り返し、豊かで威厳のある強国を築くとの夢を語り続けてきた。
そして一連のパフォーマンスが展開されている。
党のトップに就任した直後に改革開放の発祥地である広東省深セン市を訪問した同氏。_deng_小平路線を堅持する改革派である姿勢をアピールした。
同氏は河北省や、甘粛省の貧困地域にも訪れ、農民と一緒に食事を取るなど庶民派であることを内外に印象づけた。そして、幹部の腐敗を徹底的に取り締まり、公平な社会を構築すると約束した同氏。「人民の一員であり、その苦楽を知り尽くしている」という人物像を国民に植え付ける狙いだ。
一方、軍の関連機関をも頻繁に視察した。「軍は党の主導を受ける」との方針を再三にわたり強調して「国家を守れ」と檄を飛ばし、中国を軍事強国に変えていく決心を覗かせた。
そもそも、習近平氏は共産党の高級幹部の子弟からなる「太子党」のメンバー。「太子党」は共産主義の最も忠誠的な後継者と支持者だと見なされている。習氏は幹部の腐敗を取り締まり、貧富格差を解消し公平な社会を築くと誓ったが、改革が特権階級に及んだとき、それでも推進するのかが関心の的である。
BBC中国語版は記事で、「彼の夢とは何か。その夢がどのように実現されていくのか」と問題を提起した。
「習氏は政治改革を行うはずがない」
著名ジャーナリスト、高瑜氏はBBC中国語版の取材に対して、「習近平氏が唱えている改革は決して真の政治改革ではない」と否定的な見方を示した。
「習氏の真意を探るには、公に語られている中国の夢よりも、内部での発言にもっと注目すべき」と語る同氏。その情報によれば、習氏は党員との内部交流の席で、政治改革について「欧米の政治体制とその普遍的価値観を取り入れるという理解は、改革に対する『誤解』であり、中国の特色ある社会主義の道に沿って改革を行わなければならない」と説明したという。
中国当局幹部の目に余る腐敗が国内外で周知される中、多くの中国人は政権に強い不満を抱いており、心中では共産党政権の合法性を認めていない。高氏はこの社会現状について、「共産党の最も深刻な問題点はまさにこのことである。習氏はこの現実をはっきりと分かっており、解決すべき最重要課題であることも認識できている」と述べた。
さらに、同氏は「習主席は『より効率良く、よりクリーンな政治』の構築を目標としている。しかし、民主、憲政、多党制、報道の自由を排除した権力体制の下で、この目標が実現できるかは非常に疑問だ」と指摘した。
「党がなぜ軍を主導しなければならないのか」。かつて習氏は党内でこの問題に触れた際、「旧ソ連の崩壊は何よりの教訓だ」と警鐘を鳴らしていたという。
保守的な発言を繰り返してきた習氏を改革派、そして夢のある指導者として期待している人々に対して、高瑜さんは、同氏は共産党体制を揺るがす行動を取るはずがないと忠告した。「軍は国家の基盤であり、党は軍をしっかりと支配する。これは習氏の基本理念だ」
「豊かで強大な中国を築いていく」と意気込む習氏。「それが目的ではなく、根本は共産党の統治を強化するためだ」と高氏は言う。
外国メディアの見方
英紙「サンデー・テレグラフ」は記事で、経済面で豊かになった中国社会は精神と信仰の領域では「真空状態」だとし、「習氏は国民安泰と国家富強の未来図を描くことで、13億人を結束させるための新たな物語の創作に着手しようとしている」と冷ややかな見方を呈した。
BBCや米ニューヨークタイムズ傘下の国際英字紙「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」も、習近平氏の中国の夢について、民族主義の色合いが非常に強く、軍事強国を築くその発言は「隣国に不安をもたらす、強硬的な外交政策の幕開けではないか」と懸念した。
http://www.bbc.co.uk/zhongwen/simp/china/2013/03/130317_xi_chinadream.shtml
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