【大紀元日本2月1日】北京の第一社会福利院(老人ホーム)では、ベッド1100床に対して1万人以上の申し込み者が空き待ちをしている。これは中国主要都市の老人ホーム事情を端的に表している例だ。英デイリー・テレグラフ紙はこのほど、北京晩報の情報を引用して伝えた。
老人ホームのスタッフによると、ベッドは満杯状態で、毎年十数床程度しか空きがでないため、今から申請しても「一生待つことになる」という。
中国では老齢化が急速に進んでおり、2015年には2億2000万人が60歳以上の老齢人口になると見られ、40年以内にその数字は5億人にまで跳ね上がり、全人口の三分の一にまでなると予想されている。
老齢化が急速に進む理由はこれまでの政策に遡れる。毛沢東政権の二十数年間、出産奨励で人口が大きく膨らんだが、その後の1979年から一人っ子政策に転換したため、出生率は急激に下がった。
伝統的に老人と子供世代の同居が好まれ今でも多数派ではあるが、北京市では、45万人の老人が一人暮らししているという。市内には公立の老人ホームが215軒、私立の老人ホームが186軒で、老人100人に対してベッドは3床という計算になる。
北京市民政局によると、現在、老人ホームの増設が急ピッチに進められている。2015年までにベッドを12万床にまでしたい考えだが、その費用は高騰し続けており、市郊外の高級老人ホームでは、一年の費用が25万元(約370万円)にまでなるという。
老人ホーム整備の目安として、中国政府は「9・7・3」の方針に基づいている。90%の老人が家庭で暮らし、7%が政府の提供する公立老人ホーム、3%が私立老人ホームに入居するというものである。
北京と同じような状況は上海でも起きている。「開業してから十数年になるが、60床はいつも空きがあった。しかし2年前から状況が一変。問い合わせの電話が鳴り止まないのだ」。上海郊外で老人ホームを営む顧玉卿さん(74)はこう話し、「以前は若い人たちが、年老いた親を老人ホームに入れると後ろ指をさされるのではないかと心配していたが、今では状況が変わり、老人たちも独立した暮らしを好む人が増えた」と老人ホーム人気の背景を説明した。