今年3月、何事も無いかのように振る舞う薄熙来氏(Getty Images)
【大紀元日本10月4日】重慶市元トップで、すでに党内の全ての役職を解かれていた薄熙来氏について、中国国営新華社は9月28日、同氏の党籍が剥奪されるとともに、党中央政治局および中央委員会から追放されたと伝えた。党籍を離れた同氏に対して、今後、本格的な刑事捜査が進められる見込み。一方、フランスのRFIラジオは米国本部の中国語情報サイト・博訊ネットの情報として、これまで薄氏に関係してきた複数の幹部、いわゆる「薄熙来の残党」をどう処理するかについて、その影響の大きさから党内での意見の一致はなされていないと伝えた。
「四人組」以来の大罪となるか
中国共産党政権下の中国において政治上の巨大な変化が起きれば、それまで権力を掌握していた側の人間がことごとく打倒され、一夜にして政治生命を失ったり、投獄されたりすることは現在でも変わりない。
今年2月の王立軍亡命未遂に端を発する一連の事件により、薄氏が失脚。しかしこのことで、ひとまず勝利者側となった党指導部にしても、薄氏の残党を早急かつ徹底的に処理する必要に迫られるとともに、それによる今後の政権へのダメージも小さくないというジレンマを抱えることになった。
これについてRFIは博訊の消息筋の話として、「薄熙来の案件は、多くの高級幹部に影響を及ぼすことになった。その中には、軍部内の太子党のほか、薄が自身のために全国的規模で買収した知識分子やオピニオンリーダーも含まれる。これら薄派の残党を一網打尽に処分することについては、常務委員会の中でも意見の一致をみていない」と伝えている。
その理由として博訊は、次のように指摘する。常務委員会として薄氏に関係した人物を一斉に処分するためには、薄氏の司法上の罪名を「(国家)転覆罪」「(党権力)簒奪罪」などの、より重いものにしなければならない。しかし、薄氏にそれほど重大な罪名を冠せば、中国社会の分裂を招き、目前に迫った18大(第18回中国共産党大会、11月8日より開催)に支障をきたす懸念が党指導部にあるという。
ここで例として挙げた「(党権力)簒奪罪」は、文化大革命の終結後、江青ら「四人組」を審理する裁判(80年11月~81年1月)のなかで使われた罪名の一つであり、以来、同様の罪名が実際に使われたことはない。
党指導部の本音は「18大の後」
現在の党指導部は、予定されている執行部の権力移譲を無事に行い、新体制を速やかにスタートさせることを第一に考えている。
しかし、胡錦濤総書記が主導しているとみられる次期執行部の人事に対して、江派に連なる勢力は今も巻き返しを狙っている。そのため、まずは薄熙来氏の処分を厳粛に行い、18大終了後に、機会をみてその「残党」を一斉処分したいというのが党指導部の本音のようだ。
18大前の一斉処分は避けたいとする点については、当初薄氏を擁護する立場をとった江派の周永康氏も含めて、現在の9人の常務委員は概ね見解が一致しているという。
ただ、薄氏に対して政治上の重大な罪を問う刑事捜査が開始されれば、薄氏に関係してきた多くの人物が連鎖的な影響を受け、刑事責任を追及されることは必至だ。それに該当する人物は、副省長級以上の幹部に限っても、現在判明しているだけで17人に上ると博訊は見ている。
これら多数の高級幹部に対し、18大前に捜査の手を向けることは、一層の社会不安を招くという意味で、党指導部にとってもリスクが大きい。
しかし、いずれにせよ18大後に再び動きがあることは確実で、次期最高指導者のポストに就くとされる習近平氏が、どの程度まで踏み込んで薄氏の「残党」を処分するかは、その「残党」勢力の大小によって決まるとみられている。
ただ、それらの「残党」にとってすでに明白なことは、目前に迫った18大におけるポスト争いでは、彼らからすでに、重要なポストが遠のいたことだろう。
(翻訳編集・牧聡士)
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