国内専門家や業界関係者は造船会社の大規模な淘汰が始まったとの見方をしている。(GOH CHAI HIN/AFP)
【大紀元日本9月10日】国内外の景気悪化で受注が激減し、中国造船業界は現在深刻な状況に陥っており、造船企業が相次いで倒産している。業界関係者は将来2~3年間で国内の半分の造船企業が倒産に追い込まれるだろうと予測している。
中国船舶工業協会が8月28日に発表した船舶工業経済運行統計データによると、今年1~7月までの中国の主要造船指標が前年同期比で大幅に下落している。同統計データによると、1~7月までの中国造船竣工総量は3549万積載重量トンで、前年同期比77%減少した。1~7月までの新規造船受注総量は1164万積載重量トンで、同50.7%減少。さらに7月末現在の手持ち受注量は1億2348万積載重量トンで、同29.9%減となり、2011年末と比べて17.6%減少した。
イギリス造船・海運調査会社の「クラークソン・リサーチ」によると、1~6月まで中国造船業が獲得した造船受注件数は182隻で、昨年同期の561隻と比べて67.5%と激減した。さらに中国造船業ピーク時の2007年の2036隻と比べて、約91%と激減した。
受注が激減した影響で、過去1年間で生産停止に追い込まれた造船企業が多くある。民営中小造船企業が集中する浙江省楽清市経済および情報化局の統計によると、同市には約23社の造船企業があり、昨年下半期に正常生産をしていた企業の数がまだ13社あったが、現在7社にとどまっており、約3分の2の企業が生産停止をしたという。
また、民営中小規模を中心に倒産せざるを得ない企業も多くある。昨年10月浙江省寧波市では優良企業の藍天造船集団と恒富船業有限公司の2社が倒産した。今年に入ってから、2月に四川省重慶市金龍船業有限公司、3月に江蘇省南通市の南通恵港造船公司、5月に浙江省台州市の金港船業有限公司、さらに6月に中国と韓国の合資会社である遼寧省大連市の東方精工船舶有限公司が相次いで倒産した。
一方、造船大手企業も収益減で難局に直面している。2010年に香港株式市場に上場を果たした中国民営造船最大手の熔盛重工集団(江蘇省)が8月21日発表した『2012年中期業績報告』によると、今年上半期の同社の営業利益は54億6000万元で、前年同期比で37.2%減少した。また、同期の純利益が2億2000万元で、同82%減少。国内報道によると、同社が上半期での業績が純利益を出せたのは、政府当局から6億7000万元の補助金を受給したからだという。このような非経常的収益を除けば、同社の上半期の業績は赤字に転じる可能性が高かった。
また、国有企業で香港と上海両株式市場に上場している広船国際股份有限公司(広東省広州市)は政府からの軍需工事受注があったにもかかわらず、同社が8月24日発表した『2012年中期業績報告』によると、上半期の営業利益が34億3300万元で、前年同期比で約14%減少。また純利益が約8799万元にとどまり、同67%減少した。
さらに、昨年8月18日に英ロンドン証券取引所に新規株式公開(IPO)を実現した浙江省温州市にある民営造船大手の東方造船集団は、国内外景気の急速な冷え込みで負債総額が11億元に達したことで、同社の陳通考・会長が今年2月に行方をくらましたことを受けて、今年6月8日にロンドン市場から上場を廃止された。現在、中国農業銀行や中国建設銀行および上海浦東発展銀行が、東方造船を「船舶運営融資契約違反」「融資契約違反」などの理由で起訴し、浙江省寧波市海事裁判所にて審理中だ。
2006年、中国政府が造船業を国家重要戦略産業と位置付け、「船舶工業中長期発展計画」を発表した。このように政府からの強い後押しを受けて、安価な製造コストと人件費を武器に、中国の造船業が急速に発展し、韓国や日本に次ぎ世界3位になった。しかし、2008年世界金融危機発生で造船受注が大幅に低迷したことで、2009年中国政府当局が造船業を含む「十大産業振興計画」を打ち出し、国内船舶市場の需要拡大、金融機関の造船企業への融資枠拡大などを促した。その結果、2010年は上半期中国造船業が受注量、手持ち工事量、竣工量の主要指標で韓国を抜き、世界1位となった。国営大手や民営中小造船企業の数もピーク時には3400社に達し、一定規模以上の船舶工業関連企業が1630社あったという。
しかし、欧州債務危機の長期化や米国景気回復の遅れなどで受注が激減したことにより、中国造船業界の過剰生産能力問題が浮き彫りとなった。また、造船企業間の激しい競争により、新造船の価格が8年ぶりに最低水準に下落したため、受注があっても利益にならない状況がよくあるという。
このような状況を受けて、国内専門家や業界関係者は造船会社の大規模な淘汰が始まったとの見方をしている。中国船舶工業経済研究センターの首席研究員である張静氏は「北京商報」(7月31日付)の取材に対して、造船業界における倒産ブームはまだ始まったばかりだと示した。7月2日付国内紙「証券日報」によると、国営造船大手中国船舶工業集団公司の譚作鈞社長は将来2~3年間で約50%の造船会社が倒産に見舞われるだろうと話した。さらに9月4日付「中国経済週刊」誌は、資金調達難や受注激減などが中国造船業に深刻な打撃を与えており、最も悲観的な予測をするならば、打撃を受けた造船企業の数はピーク時の3400社から300社に激減するだろうと考えられるとの見方を示した。
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