米格付大手ムーディーズは中国の銀行の不良債権拡大および大幅な収益減を警告した(LIU JIN/AFP/Getty Images)
【大紀元日本9月6日】米格付大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月30日に発表した調査報告書において、中国の銀行における資産品質が劣化しており、収益成長の鈍化はその信用格付にマイナスな影響を与えているとし、これは数年来の業績改善基調が終わったことを意味すると指摘した。
このほど、中国A株式市場に上場する16の銀行が相次いで半年度報告書を発表している。ムーディーズはこの16の銀行のうち、浦東開発銀行や招商銀行や平安銀行など商業銀行の不良債権率が急上昇していると指摘した。特に平安銀行の不良債権率は0.71%に達して、不良債権規模は昨年末と比べて51%と急増した。
ムーディーズは、国内外の深刻な需要低迷で中国経済成長が失速し、国内製造業および長江デルタ地域に集中する輸出関連中小企業に大きな打撃を与え、これらの企業の経営コストが上昇し、資金が不足したことで融資返済能力が急激に低下したことが、銀行の資産品質の劣化を招いたとした。また、中央政府による不動産価格抑制政策の実施で地方政府の土地譲渡金収入の激減も、今後一層銀行の資産品質にマイナスな影響を与え、不良債権率のさらなる上昇につながるとの見方も示した。
ムーディーズの調査報告書によると、平安銀行の新規不良債権は主に浙江省温州市に集中しており、また浦東開発銀行や建設銀行などの新規不良債権も主に長江デルタ地域に集中している。
さらに同報告書では、中国人民銀行(中央銀行)が金融機関の金利自由化および金利裁量権拡大の一環として、6月に国内金融機関の預金・貸出金利変動幅を調整し、金利差の縮小で中国の銀行の収益性を低下させていると指摘した。
人民銀行は6月8日に、金融機関の人民元預金・貸出基準利率をそれぞれ0.25ポイント引き下げた(1年物預金基準利率は3.25%に、1年物貸出基準利率は6.31%にする)と同時に、金融機関の預金金利変動幅の上限を基準利率の1.1倍、貸付金利の変動幅の下限を基準利率の0.8倍にすると金利変動幅の拡大を発表した。これを受けて、中国商工銀行を含む国有4大銀行がいっせいに当座預金の金利を0.44%(普通預金基準金利0.4%の1.1倍)に設定し、またそれぞれ1年物などの定期預金金利の引き上げと貸出金利の引き下げを行った。
しかし、7月6日、人民銀行が1年物預金基準利率は3%に、1年物貸出基準利率は6%にすると今年2回目の追加利下げと、貸付金利の変動幅の下限を基準利率の0.7倍にすると発表した。これによって、銀行の貸出金利と預金金利の差がさらに縮小した。
中国にはこれまで金利の自由化がなかったため、貸付と預金との金利差が金融機関の主要な収益源だった。金利の自由化により、今後顧客獲得や資金集めにめぐって金利の面における銀行間の競争が激しくなり、銀行の経営圧力が増大するとみられる。また、中国経済が急激に失速しているため、中央銀行が下半期に今年3回目になる追加利下げ実施の可能性があるとの観測から、金利自由化と利下げに伴い、金利差の縮小で銀行の収益が大幅に減少する傾向にある。8月31日付英「フィナンシャル・タイムズ」中国語版は、中国各銀行の平均収益増長率は2、3年前の30%だったが、現在は10%台を下回る水準に低下したと指摘した。
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