地溝油が原料の抗生物質、20か国以上で流通 日本にも流入か

2012/09/05
更新: 2012/09/05

(ネット写真)

【大紀元日本9月5日】「太太口服液」で中国の健康食品業界の主導的地位を打ち立てた健康元薬業集団が、1年半の間に1.45億元の地溝油(下水油)を購入し抗生物質の中間原料7-ACAを生産していたことが明らかになった。これは全国7-ACA市場の25%にあたる。同物質は、欧米や日韓、インドなど20数カ国にも輸出されている。

このことは、全国規模の地溝油事件の審理過程で浮き彫りになった。2010年はじめから2011年7月の間、河南省惠康実業総公司(河南惠康)および同関連企業は、中国の医療品大手・健康元の支社である焦作健康元と契約を結び、総額1億4500万元(日本円でおよそ18億円)、合わせて1万6200トンの地溝油を販売した。平均販売価格は8950元/トン。この価格は正常な大豆油をトンあたり1000元以上下回っている。

「農作物には人糞を注いでいるが、食糧は有毒なのか」

事件発覚後の8月30日、健康元が証券会社とメディアを招き電話会議を行った。同社代表の朱保国理事長は席上で、食品廃棄物を7-ACAの発酵原料として用いることは理論上無害であると弁明し、同社製品は殺菌や発酵などの工程を経て製品検査にも合格していると強調した。

同社首席研究員の呉惠芳氏も地溝油の使用が無害であるとの説を展開した。「微生物の発酵原料としての地溝油と食品としての地溝油は根本的に異なる。地溝油はただ微生物に栄養を与えているだけ。肥料が農作物に養分を提供しているようなものだ」

この説に朱理事長も賛同し、「農作物に人糞を注ぐからと言って、食糧が有毒と言えるのか」と地溝油使用の正当性を主張した。

一方で同日午後、健康元は自社サイトにおいて、河南惠康から購入した油に地溝油が調合されていたことを同社は知らなかったと弁解した。

地溝油の生産現場(国際金融報よりスクリーンショット)

事態収拾策は奏功せず

健康元が図った事態の早期収拾策は功を奏することはなかった。翌31日、同社の株式取引はストップ安となった。

北京科技大学の劉澄教授は健康元の釈明を一蹴した。「地溝油が人々の反感を買っているのは、その毒性のためである。現在、バイオディーゼル・オイルなどへの利用が許可されているものの、食卓に上ることは許されていない。ましてや衛生条件が食品よりもさらに厳しい薬品には決して許されない行為だ」と指摘した。

さらに、今回の事件についてのネットアンケートでは、「これからも健康元の製品を買うか」の質問について、「絶対買わない。自分の健康を大事にする」と回答した人は、全回答者1万8474人の94.66%を占めた。また、「食品や薬品の安全問題が禁止されてもなくならないのはなぜか」という質問では「懲罰の程度が弱い」と「監督部門の法律執行が行き届いていない」の票が、「企業が利益に目がくらみ、禁じることが難しい」という票よりも多かった。

60社が巻き込まれ、海外にも被害

地溝油を生産原料に利用する企業は健康元にとどまらない。朱理事長によると、河南惠康の地溝油は健康元以外にも、60社以上に供給されており、その中には薬品会社、上場企業も含まれているという。なお、焦作健康元は河南惠康の主要な取引先で、同社産地溝油の半分は健康元に流れている。

台湾紙・聯合報は31日、健康元が抗生物質の原料として生産した7-ACAは中国国内のみならず、欧米や日韓、インドなど20数カ国にも輸出されていると報じた。

焦作健康元は健康元の子会社で、河南省焦作市に位置し、総面積は37万平米。同社主導製品7-ACAに使用される酵素生産法は、中国の技術高度化計画「863計画」の研究プロジェクトでもある。

(翻訳編集・坂本)