北京に腎臓摘出の「闇基地」 51人から腎臓摘出 国内最大規模か

2012/03/05
更新: 2012/03/05

【大紀元日本3月5日】北京市海淀区の団地「頤和山荘」の一棟。そこでは医師、看護士、仲介人など16人による「腎臓の闇売買」という血塗られた取り引きが密かに行われていた。

最近起訴されたこの事件は、中国当局が認めた人体臓器売買事件の中で最も重大だとされている。済南時報など国内メディアの報道によると、容疑者・鄭偉は頤和山荘にある4階建ての建物を借り上げ、腎臓摘出の「闇基地」に改造した。鄭と15人の医師や看護士が51件の腎臓摘出手術を同建物内で行い、不法利益1000万元(約1億3000万円)以上を得ていたという。

2万5000元で手に入れ、22万元で売る

内モンゴルに住む張さんは貧困生活を送っていた。高校中退の彼は、出稼ぎはするものの、しばしば生活費に窮する状態だった。親からの支給も、そのうち見切りがつけられた。そんな張さんはインターネットを介して鄭容疑者らと接触。2万5000元(約32万円)で片方の腎臓を売るという話をまとめるまでには、ほとんど時間はかからなかった。

列車で上京した張さんは、出迎えた男性に連れられ、海淀区のあるアパートでしばらく宿泊することになった。アパートの「住民」には、張さん同様のドナーが多数いた。そこは鄭偉容疑者らの「ドナーバンク」だった。張さんはその後、病院で移植の為の検査を受けた。

一方、7、8年前に尿毒症を患った王さんは、同病の患者からの情報で鄭偉らの存在を知った。王さんは鄭に連絡し、22万元(約285万円)で腎臓を買い取ることに同意した。

鄭容疑者は「住民」のデータから張さんを定めた。こうして、張さんの片方の腎臓が王さんのものとなり、王さんが22万元を支払い、張さんが2万5000元を報酬として受け取った。残りの20万近くは容疑者グループで山分けされた。

大規模で組織的な腎臓売買

鄭偉グループは2010年12月に摘発され、先月末に起訴された。同犯行グループは2010年3月から12月までの10ヶ月の間、51に及ぶ腎臓を摘出し、1000万元以上の不法利益を得ていた。多い日は一日で6人の腎臓を摘出したという。

腎臓摘出手術は、数人の正規の医師が執刀。そのうちの1人は、ある病院の副院長を務めていたという。鄭容疑者は2010年の旧正月に安徽省簫県の医師・周鵬容疑者と知り合い、腎臓売買の話を持ち出した。その後、周鵬の紹介で鄭はさらに数人の医師と知り合い、彼らに、北京市内の某知名病院の名義で偽招聘状を発行した。その中の1人、趙健容疑者の供述によると、北京の大病院が自分のような地方病院の無名医師に声をかけるはずがないと思いつつも、毎回数千元の報酬を前に、頻繁に行われる怪しい手術を、ただ黙ってこなしていたという。

摘出手術は最初、江蘇省農村部の病院の手術室を借りて行われていた。しかし、摘出した腎臓を北京に運ぶ際に交通事故に遭い、「損失」したため、鄭容疑者は北京市内で家賃7000元の4階建ての建物を借り上げ、さらに50万元を投資して摘出手術に必要な医療機器を備え付けた。この「闇基地」の1階は医師が寝泊まりする部屋と薬局で、2階は病室と看護士の宿泊部屋。3階は手術室と観察室で、4階は食堂だという。

「あそこに行ったばかりの時は、白衣も手術服もなかった。衛生環境も悪く、免許も証明書も何もない。設備はすべて、その後、買い集めていったのだ。あそこは病院ではなく、腎臓摘出所だ」とグループの中で看護を担当する樊容疑者は証言する。

一方、この闇基地で摘出される腎臓のほとんどが北京市内の正規の病院で患者に移植されるという。闇基地と正規病院との繫がりは明らかにされていない。

中国当局が公開したデータによれば、中国では毎年、約100万人が末期腎臓病を患い、その多くは腎臓移植が必要としている。だが、昨年一年間、正規ルートで行われた腎臓移植は4000件以下。この需要と提供の大きな落差を狙う闇臓器売買は後を絶たない。

中国の臓器売買は2000年ごろから件数が急増し、その供給源が疑われてきた。昨年10月、世界各国の医師が参加する「臓器の強制摘出に反対する医師会」は中国国内の病院で行われた臓器移植手術の回数とドナーの数が合致しないことを指摘し、中国衛生部に詳しいデータの開示を要請していた。同要請文では、「臓器提供を希望しない生きた人、特に法輪功学習者の臓器が本人の合意なしで『臓器提供バンク』に登録されている」と、闇ルート以外にも、中国での国家絡みの臓器狩りの存在を改めて示唆した。

 (翻訳編集・張凛音)