【大紀元日本2月10日】中国共産党中央委員会が毎年、最初に公布する文章は「一号文章」と呼ぶ。今年の一号文章は過去8年に引き続き農業発展議題に関する文章であり、高層部が農業発展を重視していることを表した。今年の文章は農業における科学技術革新を強調しており、農業の発展に隠れた危険が存在することを示唆している。
農業発展に三つの憂慮
中央農村工作指導小グループの陳副グループ長は2日に行われた記者会見で、農業の発展にはまず、農村人口の継続的な減少という厳しい挑戦に直面していると認めた。「街へ出稼ぎに行く農村からの出稼ぎ労働者は増加し続けている。その数、現在およそ1.6億人といわれており、このため村の労働力が減少している」。だが一方で、農業の技術水準が上がったため、農業生産は深刻な影響を受けてないとも話している。
同時に陳氏は中国の農業発展に存在する「三憂」について指摘した。ひとつは食糧生産が8年連続増加しているものの、農業用の土と水資源はすでに使い果たされており、生産量をさらに上げるには単位面積の生産量を上げるしかない。化学肥料を使用し続けることは環境破壊につながるため、長期的には難しい。同氏は農業の増産は最終的に生産性の向上に頼ることと考えており、これが今年の一号文章が農業科学技術の革新に注目した意図だと説明した。
中国の農業専門家が以前、農業生産量アップに対する過度の追及に対し警告を発した。中国の日信証券の市場アナリスト呉氏がメディアに対し、生産量追及の直接的な結果として、中国では良田が貧土化し、一部ではすでに生産を続けることが難しい状態に陥っていると指摘した。
「農業はこれほど多くの年月を経て発展してきたが、単位面積当たりの生産量の向上ばかり強調してきた。だがその結果は、化学肥料を過度に使用したため土地が痩せたばかりでなく、環境に対し一定のダメージを与え、資源の浪費にもつながった」
二つ目の憂慮は農業生産が直面する高コスト高リスクだ。農産品価格の変動は非常に大きい。一方で、農薬や化学肥料など農業用物資の価格が上昇し、生産コストが高騰。そのため、農民の農務に対する積極性が低下する。
三つ目は、見え始めた都市と農村の格差縮小がはっきりとした流れになるか否か、どのようにして農民にさらに多くの発展の成果を享受させるかであり、この課題は非常に困難であると同氏は考えている。
一方、中国農業部(省)の研究報告によると、今後、農民の収入は多くの中小企業の経営難を含む一部の不利な要因の影響を受ける。農民が外で就業する機会は減少し、加えて都市住民の上がり続ける収入により都市と農村の格差は拡大し続ける可能性があるという。
「恵農政策」は長期策にならない
中国農業大学農民問題研究所の朱所長は、現在農民の主な収入は出稼ぎ収入や農業経営収入、国の「恵農政策」各項目の補助金であるため、農民収入の増加には政府が農業と農民への投入を引き続き増大する必要があると指摘した。
だが、これに対し米大手格付会社ムーディーズの研究員・成旭氏は、農民の収入向上への根本的な道は農業以外への就業であり、地元企業への就業はその有効な道の1つであるとコメントした。政府に頼るだけの恵農政策は長期策にならないという。
「農村人口が減少すれば、各農家のもつ資源が相対的に多くなる。ならば農産品の価格はそれほど上昇しなくても、資源が増えているため、総収入が比較的増えるはずだ。長期的にみれば、ここから着手せず、ただ国の政策に頼るだけでは、現状が打開できないと思っている」と同氏は述べた。
今年の一号文章はさらに、始めて「職業農民」について言及している。農村工作指導グループの唐氏は記者会見において、職業農民、専門知識をもつ農民を育成し、新たな技術を持ち経営のできる農民を農村に定着させ、或いは農村に戻り、農業生産の現代化経営に従事させるとの考えを発表した。