休み明けの求人難 農民工を遠ざける「半都市化」

2012/02/09
更新: 2012/02/09

【大紀元日本2月9日】旧正月休み明けの中国南部の海南省ではさっそく求人フェアが開かれた。160社以上の企業の参加に対して応募者はわずか。「これまで年明け最初の求人には応募者が殺到してきたが、今年は状況が厳しい」と参加企業の担当者が嘆く。

数年前から中国全土には「民工荒(出稼ぎ労働者不足)」現象が見られる。ここ数年、旧正月前に帰郷する労働者をふたたび確保することが難しくなってきている。沿海部と内陸部の間では、労働力争奪戦が繰り広げられており、労働者確保ができない企業が工場の稼働を延期する事態も起きている。専門家は、中国の労働力の構造的問題はすでに突出しており、「半都市化」がもたらした労働者の就業保障問題を解決することが性急に求められていると指摘する。

 売り手市場の労働力市場

海南省の求人フェアには省都・海口市の飲食業界の企業も参加した。店主を含め、数名を募集する予定だったが1人も確保できなかった。米VOAの取材に答えた担当者は、「サービス業はある程度の学歴を要するが学歴のある人はサービス業は避ける。この業界は敬遠される傾向にあり、なかなか人手を確保できない」とサービス業界への採用の難しさを漏らす。

製造業も求人難だ。広州市の求人フェアに参加した企業は、軒並み賃金を上げて募集している。広州市の最低賃金水準の1300元(約1万6千円)を大きく超え、5000元(約6万円)を超える月給で募集している企業もあるという。「製造業という労働集約型の業界で、その肝心な労働力を確保することが難しい。競争力を保つために、同業他社の状況をにらみつつ調整するしかない。15%以上の上げ幅は普通だ」とフェア参加企業の担当者は話す。

加工産業の集中する浙江省も厳しい状況だ。省都杭州市で開かれた求人フェアも閑古鳥が鳴く。安徽省から来た労働者らは、今はチャンスが多いためじっくり選びたいと話している。また40代の夫婦は、自分たちは熟練工ではないが、杭州市で生活するにはある程度の賃金がないと難しいと話した。「私は3500元から4000元で、彼女は3000元以上の所を探している。去年温州(浙江省)にいた時も3000元を超えていた」という。

求人難はこれらの沿海部都市に止まらない。四川省、重慶市、安徽省などといった「労働力輸出省」も労働力を地元に止めるために給与引上げなどの策を懸命に考案している。企業の人事担当が、鉄道や長距離バスの駅に出向き、地元企業の良さをアピールすることで、地元の労働力の流出を瀬戸際で防いでいる。それに対抗して、一部の沿海部の企業は長距離バスをチャーターして労働力をスカウトし、そのまま工場に連れ込んでいる。

 構造的な問題

中国社会科学院の研究によれば、2004年からすでに中国の就業人口の増加が需要の増加を下回り、そのズレが年々顕著になっている。

北京大学の樊綱教授は、都市化が徹底していないことは出稼ぎ労働者が安定した状況で働けない要因であると指摘。教授は昨年、労働者の安定した就業を促進するために社会保障制度の適用を政府に提案した。「まず出稼ぎ労働者に基本的な社会保障を提供する。その後、徐々に保障範囲を拡大していけばいい」。現在の戸籍制度(都市人口と農村人口を分ける)はすぐに抜本的な改革ができなくても、「都市常住人口」の概念を導入し、都市で働く労働者の子弟教育などの切迫した需要を満たす必要があると教授は指摘する。

北京師範大学貧困研究センターの李実主任は、現在の都市化は「半都市化」であり、出稼ぎ労働者を都市部から締め出す構造となっていると指摘している。就業市場の供給関係を乱しただけでなく、社会不安の重要な要因にもつながっていることを同主任は懸念している。

 (翻訳編集・張凛音)
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