【大紀元日本11月26日】広東省で今月、大規模なデモが発生しながら、警察は取り締まりを行わず護衛したことが、中国で話題になっている。広東省当局の集団事件に対する措置が調整されたと窺わせ、省トップの汪洋書記が中央の次期最高指導部入りを考慮した政策転換であると見られる。
2つのデモ行進
広東省南部にある陸豊市で21日、大規模なデモ行進が行われた。村幹部が農地を無断で売却したことなどに抗議したこのデモは、警察への申請のもとで秩序よく行われていた。
デモを起こしたのは陸豊市烏坎村のおよそ4千人の村民ら。農地の無断売却に加え、村幹部の選挙にも不正があったと抗議する村民らは約2キロの隊列を作り、「独裁反対」「嘘つき反対」「農田を返せ」「打倒官商(政府と企業)結託」「打倒汚職官吏」などと書かれたのぼりを手に、整然と村から市政府まで行進した。
市政府広場に到着した村民は秩序を保ちながら座り込みで抗議を続けた。40分後、市長が村民代表から書簡を受け取り、無断で売却された土地に関する訴えを早急に解決すると述べたため、デモ隊は速やかに解散したという。
今回のデモの特徴について、ネットユーザーの「幽壹」は▼市政府に事前に申請した(許可の可否は知わからない)▼村はデモ費用を集め、寄付も加えると活動経費は百万元以上に上った▼デモ行進中の秩序維持をする治安隊も結成された、などと計画性と秩序性が高かったと指摘した。
中国人権活動家の謝さんによると、地元警察は今回のデモを制止することはなく、香港、台湾、マカオ等からの記者も取材に来ていたという。
18日昼ごろ、広州市で行われたデモの様子。警察の先導に従いデモ隊が行進している(ネット写真)
このデモの3日前、同じく広東省広州市で出稼ぎ労働者数百人が賃金の未払いに抗議してデモを行った。労働者らは「「稼いだ金を返せ」などのスローガンを口々に叫んで行進したが、行列の先頭では警察が道を先導し護衛していた。
「十八大」への布石か
地方の公安が大規模なデモ行進を黙認するには、上層部の同意が必要だ。香港紙・アップルデイリーは、この2回のデモの様子から、広東省当局が安定維持方法を調整していることが窺える、と時事評論家の朱建国氏の見方を伝えた。
広東省トップの汪洋書記は来年開かれる十八大(中国共産党第十八回全国代表大会)において最高指導部入りを目指しているため、しばらくの間、妥協しているものと朱氏は見ている。
同省では今年の6月に、潮州市近郊で起きた賃金不払いをめぐる傷害事件で1万人の出稼ぎ労働者が参加する抗議活動が起きていた。同月に広州市郊外の新塘鎮で露天商への横暴な取り締まりが発端で1万人が参加する暴動事件も起きている。最高指導部入りを目指す汪書記は、大規模な官民衝突は進路に影を落とすと判断し、対処の仕方を転換したと朱氏は分析する。
汪書記は、胡錦濤主席を含む共産主義青年団(共青団)出身者グループ「団派」の一人。「(また流血事件が起きたら)その時は胡錦涛氏でさえ汪氏を守ることは出来ない」。十八大までは今回のような平穏無事を狙う措置が講じられる可能性が高いと見ている。