中国最大の河・長江に年間330億トンの汚水 警鐘鳴らす専門家

2011/11/03
更新: 2011/11/03

【大紀元日本11月2日】 長江は中国最大の汚水河になるかもしれない―。 中国国内の水質専門家が警告を発した。長江流域の水資源保護局が公表した最新の調査データによると、2009年度に長江に排出した汚水は330億トンに達し、全国の汚水総量の4割強を占めている。中国紙「南方都市」が報道した。

長江の全長は6300キロ、青海省のチベット高原から起源し、中国の華中地域を横断して東シナ海に注ぐ、アジア最大で世界第3位の河である。

その流域には成都、武漢、重慶などの重要工業都市、上海、南京などの商業都市を含む中国の19の省(市、自治区)があり、4.5億人に達する人口を全流域に抱える、中国最大の水源地である。

「長江の汚染は凄まじい」。10月15日、中国科学院で開かれた長江の関連シンポジウムで、長江流域水資源保護局の元局長、シニアエンジニアの翁立達氏が発言した。「この問題を重視しなければ、この中国最大の水源地は最大の汚水河になる」。ここ10年にわたり、この年老いた専門家は様々な場で同様の警告を発し続けている。

1980年代、中国の経済は急速に発展する。長江の汚染も急激に進んだ。水環境の変化を調べるため、長江流域水資源保護局は、支流の10以上の省・市で観測スポットを設置した。

551箇所の観測スポットから、26の観測項目、計1700万個の観測データを収集し、汚染状況を細かく調べてきたという。

「黄河や、淮河、海河、遼河などの大河に比べて、長江の水質はまだいいほうだが、長江自身の20年前の状況と比べると、状況は非常に深刻で、しかも悪化する一方だ」と翁立達氏は説明した。

中国国家環境保護部の公表データによると、全国2万社以上の化学企業のうち、約1万社は長江の沿岸に位置している。総投資額が1兆元(1元約12円)以上の化学工業、石油化学工業の建設プロジェクトは7000を数えるが、そのうちの8割は三峡ダム周辺、長江の支流、人口密集地に集中している。生活用水の水源地あるいは自然保護区、主要な漁業水域にも存在する。

これまでに幾度も、長江への企業の汚水排出は無法状態で、政府による監督・管理体制は不十分だと指摘されてきた。

南方都市報は、湖北省の大手化学企業「楚源化工」が1990年代に毒性の強い工業廃水を長江に流し続けていると指摘している。数年前に、北京のあるメディアが掲載した一枚の写真には、同工場の汚水排出口の付近で、一頭の牛が倒れて死んでいる様子が収められている。同社の汚水排出問題はいまだに放置されたままだ。「長江の沿岸部には、このような重大な汚染をもたらす企業はほかにもたくさんある」と同紙は記している。

また、企業による排出のほか、沿岸の都市部からも、大量の生活汚水が長江とその支流に流されている、と専門家は指摘する。

中国当局の水利機関の観測データによれば、1999年には、長江流域への汚水排出の総量は206.8億トン。2009年には、その数値は330億トンに達した。


「この数字は非常に深刻。全国の4割強の汚水が長江に排出されていることになる」と翁立達氏は説明した。

そのような状況下で、いま長江の中下流域の13カ所の計100平方キロメートルの大型湖は富栄養化が深刻で、水の華と赤潮が頻発している。

翁立達氏は、「政府はこれらの湖の水質改善に数百億元を投じてきたが、そのほとんどは焼け石に水。全流域の総合管理の角度から着手していないため、問題の抜本的な改善は期待できない」と指摘した。

(翻訳編集・叶子)