カダフィ政権と中国企業「7月武器売買契約」 リビア・中国関係悪化 

2011/09/07
更新: 2011/09/07

【大紀元日本9月7日】国連安全保障理事会が対リビア武器禁輸を決議したにもかかわらず、中国国有の武器メーカーが、カダフィ政権に2億ドル(約154億円)相当の武器売却を今年7月に予定していたことが明らかになった。反カダフィ派・国民評議会(NTC)も武器売却の証拠を確認していると発表しており、リビアと中国との関係は今後、悪化するものと見られている。

カダフィ政権の治安当局者は、7月16日に中国北京を訪れ、複数の国営武器メーカーと会談。その内容が記録されている4枚の「公文書」を、カナダ紙グローバル・アンド・メールのグレーム・スミス記者らが、リビア首都トリポリ市内を取材した際に発見した。4日、同紙電子版に「公文書」の複写が公開された。同文書は、親カダフィ派地区の道端にゴミとして捨てられていたもので、真偽は確認されていない。

同文書には、複数の中国武器メーカーが隣国アルジェリアを通じて、携帯式地対空ミサイルやロケット発射装置など2億ドル(約154億円)相当の武器売却の準備をしていたと記されている。しかし、実際に武器売却に至ったかどうかは、文書からだけでは確認することができない。

中国企業の幹部らが、この武器商談に関する情報を機密事項として扱うようカダフィ政権に要求していたことも、この文書には記されている。

中国政府はカダフィ政権への武器売却案を否定する一方で、中国政府には通知せずにリビアからの使者が7月、国有企業に関わる複数の人間と接触するために北京を訪れていたことは認めている。中国外務省の姜瑜報道官は5日、「中国企業は武器売却に関する契約などは結んでいない」と反論した。

しかしNTCの報道官は4日、米ニューヨークタイムズの取材に対して、「中国とカダフィの間で結ばれた取引を裏付ける確かな証拠があり、すべてを証明する文書を握っている」と述べている。

NTCの間では、中国への不信感が高まっている。NTC軍事部門トップは、カダフィ政権に渡った中国からの武器が、反体制派に向けて使われたことは間違いないと、強い反感を示している。またNTCは、国連の決議に基づき政権側に対して武器禁輸の措置がなされていたにもかかわらず、「違反した組織・政府に対して、今後リビアとの関係や石油の取引に陰りがでる」と通告している。NTCは今後、法的措置や外交などを通じて戦後補償を求める可能性があるとニューヨークタイムズ紙は関係者の話として伝えた。

グローブ・アンド・メール紙は、売却案に関与した中国国有の企業は少なくとも3社に及んでおり、同文書には中国北方工業、中国精密機械進出口、中国新興天津進出口の名前が挙がっていると伝えた。

2カ国間はすでに緊迫

海外凍結資産の問題も絡み、この武器売買の取引は、リビア反体制派と中国との間に緊張をもたらす問題に発展しつつある。8月末、カダフィ大佐が保有していた国外の凍結資産はリビア復興と人道的支援のために必要であるとし、英、仏、独は国連安全保障理事会の席で凍結の解除を主張していた。しかし常任理事国として拒否権を持つ中国が「時期尚早」と反対したため、解除案は一時、宙に浮く形となった。

NTC代表のムスタファ・アブドルジャリル議長は、中国の意見はリビア再建への妨害であると見なし、不快感を示していた。中国は、国連安全保障理事会の参加国のなかで、リビア国民評議会(NTC)を承認していない唯一の国である。

アブドルジャリル議長の非難について中国の姜報道官は5日、資産開放には原則的に問題はないとしながらも、「われわれと一部の安全保障理事会のメンバーは、資産の利用方法などにあたり、(反カダフィ派からの)さらなる説明と情報提供を希望している」と述べた。

リビア在外凍結資産は、1日にパリで開かれた「新生リビア支援国際会議」に参加した約60の国家・機関が早急に凍結解除することで合意に至っている。

今年2月、リビアで革命運動が起こる前、中国は、国有企業が主導する180億ドル(約1兆3800万円)以上のインフラ事業などの契約を、アフリカ最大の石油産油国であるリビアに持ち込んでいた。やがて国内情勢の不安定を理由に、3万5000人もの中国からの労働人口を本土へと引き上げさせた。

中国当局は、カダフィ政権側の勢力を抑えるNATO軍による実力行使に断固反対していた。軍事介入を阻止する目的で、国連安保理事会の会議では拒否権を行使した。

中国研究家ウィレム・ファン・ケメネイド(Willem Van Kemenade)氏は中東衛星放送局アルジャジーラの取材に対し、「反体制派の幹部たちが警告を発しているように、最初から彼らに支持を示さなかったロシアや中国のような国は、リビア再建計画から排除されるという罰が与えられるだろう」と述べた。

(翻訳編集・佐渡 道世)